野球クロスロードBACK NUMBER
仙台育英“150キロトリオ”が打たれたワケは…? “優勝候補の大本命”でも予想外の「0.00001%」が起こる難しさ 「これが、甲子園ですよ」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS/Kiichi Matsumoto
posted2023/08/07 17:38
優勝候補の“本命”仙台育英高の「150キロトリオ」。左から湯田統真、高橋煌稀、仁田陽翔
自身も認める技術的な不安要素。そこに加え精神面にも悪影響を及ぼしたのではないだろうか――須江の「湯田評」が、打ち込まれた原因を補完する。
「よく頑張りましたけど、ちょっと単調だったかな、と。早くアウトを取ろうとストライクゾーンで勝負してしまった」
そう睨んだ監督の決断は早かった。
9-4で迎えた5回、先頭バッターにヒットを許したところで湯田から高橋に代えたのである。「いかなる状況でも平均以上のピッチングをしてくれる」と、須江から全幅の信頼を寄せられ、エースナンバーを託される高橋は後続を断ち切り、6回までノーヒットと監督も認める安定感を披露していた。
2番手登板のエースも「まさか」の5失点
ところが、その高橋も打たれた。
7回。先頭バッターにデッドボールを与えてしまうと、打者一巡の猛攻を許し5失点。エースの豹変について、須江は「ストレートのスピードが出ていなかったこともありますけど、気負いもあったんでしょうか」と慮っていたが、高橋自身は「ただ単に体力不足だと思います」と反省を口にした。
「40球を超えたあたりからだんだん球威が落ちてきて。コースも甘いところにいってしまったところをとらえられてしまいました」
さらに紡いだエースの言葉が、この試合の核心を突いているようでもあった。
「宮城県では少し甘いところにボールがいっても抑えられましたけど、やっぱり甲子園は甘くないんだなって感じました」
そう。全国は簡単に勝たせてはくれない。ましてや甲子園の常連であり、埼玉大会のチーム打率3割7分9厘と高度な打棒を誇る浦和学院となればなおさらのこと。ましてや「150キロトリオ」と注目を浴びる彼らとなれば、くまなく研究されて当然なのである。