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二松学舎大附、帝京、関東一…高校野球東東京大会で強豪校に相次ぐ波乱!「優勝候補撃破」の4番打者には、まさかの“水陸二刀流”選手?
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2023/07/23 11:00
延長タイブレークの末、優勝候補の関東一を破った日大豊山の選手たち。左が4番を打つ“水陸二刀流”の光永翔音
高校入学前に取材した際の朴訥としながらも強い決意が滲むインタビューは今も強く印象に残っている。
――野球と水泳。どちらが好きですか?
「それが答えられなかったので、この道(二刀流)に決めました」
――将来的にはどんな姿になりたいですか?
「“2つのことをやってもいいんだ”という第一人者になりたいです」
競泳は全国大会で三冠、野球も4番の強打者に
こうして強い決意で臨んだ二刀流の高校生活で、光永はまず水泳で傑出した成績を残す。
1年時から高校生ではただ1人50mバタフライで国内トップ選手が集う日本選手権出場を果たすと、インターハイでは100mバタフライで2位、4×100mリレー、4×100mメドレーリレーで優勝。2年生になった昨夏は競泳男子100mバタフライ、4×100mリレー、4×100mメドレーリレーで3冠を達成し、チームを総合優勝に導いた。
だが、高校最後の1年は野球に重点を置いた。
大学進学後は2028年のロサンゼルス五輪を目指して水泳に専念する予定で、野球人生最後の大会で憧れの甲子園出場を叶える夢のために、やるべきことをやってきた。
冬場は間食を増やし、体重を増加。野球のためである一方で「重くなったからと言って水泳が遅くはならないと自分は思います」ときっぱり。そして野球部の福島直也監督が「ガッと入った時の集中力はすごいものがある」と話すように、どちらかといえば水泳中心だった生活による野球技術の遅れを取り戻すかのように一心不乱に野球の練習に取り組むと、今夏には4番の座を掴むまでになった。
また「チームメイトに対する声かけなどチームファーストの姿勢がすごく出るようになりました」と福島監督が目を細めるように、人間的にも成長。「野球と水泳。どちらもやりきる」と、2年前に自身と交わした約束をきっちり果たしている。