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高校野球“あのメンバー漏れで補欠選手が号泣シーン”は必要? ある監督の本音「ドラマチックに伝えられますが…」現場が悩む“ナゾの20人問題” 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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posted2023/07/04 11:00

高校野球“あのメンバー漏れで補欠選手が号泣シーン”は必要? ある監督の本音「ドラマチックに伝えられますが…」現場が悩む“ナゾの20人問題”<Number Web> photograph by JIJI PRESS

毎夏恒例“行事”ともいえる高校野球「メンバー漏れした選手の涙」。そもそもベンチ入りメンバー20人は妥当なのか?(写真はイメージ)

コロナ禍は柔軟に変えられたのに…

 新型コロナウイルスは、言うまでもなく社会を変えた。リモートによるミーティングなどが増え、在宅ワークも認められる時代になった。ただそれらは、もともと変わることができた、あるいは変わる必要性があったもので、コロナによって実現されたとも言える。

 高校野球も例外ではない。かねてより、ベンチ入りメンバーの数をはじめとしたフレキシブルな制度を求める現場の声はあった。メンバー変更の許可については「部員少数のチームに不公平」などの理由から表立って議題に上がることはなかったが、コロナ禍の特別ルールによって「あのときはできたじゃないか」と現場が気づいたというわけである。

 ここでいわれる特別ルールとは、2020年代替大会の際に多くの地区が採用していた、試合ごとにメンバーを入れ替えられる制度だ。対して現行の制度では、大会が始まるとコロナの疑いのある選手を除いてメンバー変更ができない地区がほとんどである。

 前出の監督は言う。

「組み合わせが決まれば、ある程度、戦い方が想定できる。本来はベンチ外のメンバーでも、1、2回戦は起用できるとか、逆に1回戦が甲子園強豪校だったら、割り切って3年生だけで行こうとか。もっと自由でいいと思うんですよね。コロナの時はできたんやから、同じように……っていう思いはある」

「20人であるべき」根拠はない?

 東北地区のある公立校監督も、現状の制度を懐疑的に見ている。

「(ベンチ入りメンバーは)昔が15人で今は20人ですけど、そもそも20人でなければいけない根拠ってなんなのかなと思います。よくメンバーに入れた、入れなかったことについてドラマチックに伝えられますけど、県の私学などは100人超える部員から20人しか大会に出れない。でも、チームというのは今いる部員すべてで工夫して戦うことに意味がある。部員20人のチームは全員駆使して戦えるけど、120人いるチームは20人でしか戦えない。それで本当に平等と言えるのかなって。根拠のない人数に縛られて、監督も、選手も胃を痛くしながら夏を迎えなくちゃいけない」

【次ページ】 「メンバー発表の時期」にメディアの影響?

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栗山英樹

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