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高校野球“あのメンバー漏れで補欠選手が号泣シーン”は必要? ある監督の本音「ドラマチックに伝えられますが…」現場が悩む“ナゾの20人問題”
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byJIJI PRESS
posted2023/07/04 11:00
毎夏恒例“行事”ともいえる高校野球「メンバー漏れした選手の涙」。そもそもベンチ入りメンバー20人は妥当なのか?(写真はイメージ)
「メンバー発表の時期」にメディアの影響?
「ベンチ入りメンバーの数」だけでなく、「メンバーを決める時期」についても異論が上がる。
都道府県によって異なるが、多くの地区では組み合わせ抽選の前にメンバーを決めなければならず、対戦相手によってメンバーを選考するという自由がない。
もちろん、メンバー変更が不可能なわけではないが、ケガなどによる理由がない限り認められないケースがほとんどで、容易に登録選手を変えることができない。
なぜか。理由として考えられるのは、新聞や大会冊子に各校のメンバーを掲載するためである。
かつて、ある地区の大会展望号においてメンバーが掲載されたのだが、それが選手へのメンバー発表より早い時期だったというケースがあった。
選手ファーストとは何か、メディアも含めて今一度考えるべきだろう。
「ベンチに入れず涙の球児…」に疑問
今も昔も、高校野球のメンバー選考に疑問を呈すると、こんな声が上がる。
「ベンチ入りメンバーから漏れたこともドラマになる」
「努力をしても、結果が得られないこともある。それを知るのも教育だ」
果たしてそうだろうか。最後の夏のみならず、秋、春にもメンバー決めの場はあるし、そもそも“メンバー漏れの涙”以外にも教育できる機会はある。
今年3月のWBC優勝と、日本人メジャーリーガーの活躍で、野球そのものは異常なほどの盛り上がりを見せている。しかし、この人気が子どもの競技人口増につながっているかといわれると……決してそんな話は現場から聞こえてこない。
それは野球界が選手ファーストでなく、選手が伸び伸びプレーしている印象を、子どもたちから持たれていないからではないか。
3年間、頑張ればベンチ入りして背番号付きのユニフォームを着ることができる――。野球を継続したい選手へのメッセージにもなるはずだ。
子どもたちのためになる規制とは何か、ルールとは何か。ベンチ入りの増枠、そして入れ替えは、もっと自由であるべきだと思う。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。