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高校野球“あのメンバー漏れで補欠選手が号泣シーン”は必要? ある監督の本音「ドラマチックに伝えられますが…」現場が悩む“ナゾの20人問題”
posted2023/07/04 11:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
JIJI PRESS
データはどう伝えられるかによって印象が変わる。それをあらためて感じたのが、日本高野連と朝日新聞社が全国の加盟校を対象に今春実施したアンケート「高校野球実態調査」である。この結果に関する記事が各メディアに掲載されていた。
「『丸刈り』強制せずが14%から59%に大幅アップ 変わる高校野球の意識変化 実態調査」(日刊スポーツ/6月20日配信)
「部員数減が進む=高校野球実態調査」(時事通信社/6月20日配信)
「高校野球の監督の休日、月2~3日が最多 無休2割 実態明らかに」(朝日新聞デジタル/6月21日配信)
見出しに並ぶ言葉は、いずれもこれまで何度も問題提起されてきたテーマである。だが、見出しにはならずとも、気になるデータがあった。朝日新聞デジタル(同上)で紹介されていた、高校球界の「健康対策」に対する監督たちの回答だ。
「大会日程の緩和」54.7%
「登録選手数の増加」23%
「必要ない」12.8%
「試合時間帯の見直し」11.7%
制度改革に対してこれほど直接的な意見が出ることはポジティブに捉えていい。高野連は「現場の声」を大事にしていると声高に言う。だが、日程緩和については少しずつ改善されているものの、登録選手数、つまりベンチ入りできる選手の数についてはどうか。
ベンチ入りメンバー「20人」は妥当か?
近年、取材をしていると「現状20人のベンチ入りメンバーを増やせないか」「せめて夏の地方大会開幕後にも登録選手を柔軟に入れ替えられるようにできないか」という声が多く上がる。その背景に、コロナ禍の経験があると思われる。
近畿地区のある公立校監督は言う。
「コロナ禍の代替大会の時はメンバーの入れ替えができましたけど、あの形を今もできないのかなって思います。訓練されて頑張った選手の中から選抜していくっていう時代じゃないと思うんですよ。最後は仲間と一緒に戦わせてあげるとか、1試合でもいいから同じ雰囲気で戦うとか。そういう風な“高校野球の終わり方”にポイントを持っていってもいいんちゃうかって思うんです」