酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「大谷翔平がシーズン記録更新するかも」最近よく聞く「打撃妨害」マメ知識…張本勲ら安打製造機が名人、松井秀喜もMLBで急増してた
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byIcon Sportswire/Getty Images
posted2023/05/15 11:02
バットがキャッチャーミットに当たったことをアピールする大谷翔平。「打撃妨害」というスタッツにも脚光を当てるとは……
2017年までレッドソックス、ヤンキースで活躍した外野手のジャコビー・エルズベリーは松坂大輔のチームメイトでもあり、俊足好打のリードオフマンとして盗塁王3回の名選手だが、11シーズン、1235試合で31もの妨害出塁を記録している。これはMLB1位とされる。エルズベリーはヤンキース時代の2016年には打撃妨害「12」のシーズン記録を樹立している。
2位はピート・ローズの29回。ローズが3562試合出場で29妨害出塁なのに対し、エルズベリーは1235試合で31だから、いかに多いかがわかる。これがすべて「偶然」だったのかどうか?
中、張本、大谷、エルズベリー…左打者に多い?
ただ、今季の大谷翔平は5月13日時点で37試合で「5」打撃妨害だから、このペースで行くとエルズベリーの記録を抜く可能性が大いにある。NPBの通算打撃妨害出塁数5傑は以下の通り。
中利夫 21(1877試合)
与那嶺要 15(1219試合)
三宅宅三 11(723試合)
小玉明利 11(1946試合)
青田昇 10(1709試合)
山内一弘 10(2235試合)
張本勲 10(2752試合)
ローズ、張本と日米ともに「最多安打記録」を持つ打者の名前があるのが印象的だ。また中、与那嶺、張本は左打者。エルズベリーや大谷も左打者、ローズはスイッチヒッターだ。左打者は捕手のミットから遠い位置でバットを構える。外角にバットを伸ばすときにミットと接触しやすいということだろうか。
シーズン5傑も紹介しておこう。
1960年 小玉明利(近鉄)6(122試合)
1946年 青田昇(阪急)5(96試合)
1973年 張本勲(日拓)4(128試合)
1984年 小林晋哉(阪急)4(116試合)
2009年 栗原健太(広島)4(140試合)
通算とシーズンに並んでいる顔ぶれを見ると、いかにも一癖ありそうだ。何か奥の手を出してきそうな選手たちともいえる。
ノムさんと王さんは通算「0」、ハリさんは「10」
古い野球雑誌を読んでいると「打撃の奥義に達したような名人打者は、どうしても出塁が必要な事態になると、バットをちょこんと捕手のミットに当てて打撃妨害をしたものだ。球審もそういうベテラン打者には『わざと当てたな』とは言えなかった」などという記事が出てきたりする。
もちろん、真偽は定かではない。ただNPBで最多の3021試合に出場している谷繁元信が妨害出塁はわずか「1」、2位の野村克也は3017試合、3位の王貞治は2831試合で「0」なのに対し、4位の2752試合の張本勲の「10」は多いとは言える。ましてや84位の1877試合で「21」の中利夫は、異常に多いと言えよう。