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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「野球界のマーケットから離れた人材を」独立L茨城が“35歳のNHK元ディレクター”を監督にした理由「監督って難しい。でも魅力的な…」
posted2023/05/14 17:02
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kou Hiroo
伊藤悠一監督が就任した茨城アストロプラネッツは2019年からルートインBCリーグに参入した。今年で5年目、筆者は球団創設年に山根将大社長に話を聞いたことがある。当時32歳、物流会社勤務を経て故郷茨城県で福祉、人材関連事業を展開する事業家だったが、東日本大震災時に東北楽天ゴールデンイーグルスが被災した地元の人々を勇気づけたことに感銘を受けて、独立リーグ球団を創設した。
公募してみるのもありじゃないですか
4年目の昨年は、地区優勝を果たすとともにNPBにも3年連続で人材を輩出。2020年からは海外の野球事情にも精通した色川冬馬氏をGMに迎え、体制を強化した。山根氏はこのように語る。
「もともとうちは昨年まで監督を務めた松坂賢にオファーをしていたのですが、彼がアメリカ野球でのコーチングに挑戦するとのことで、では次の監督、となった。そこで監督を任せられそうな方に中々出会えなかったんですね。
僕らが監督に本当に求めているのは、野球チームのマネジメントを僕らと同じ目線で理解できる人だったのですが、そういう方に野球界で出会うことができなかったので、だったら公募してみるのもありじゃないか、となったんです。そのときに、野球経験者や男性、女性など、そういうのも気にせずに幅広く声をかけてみたら、すごくいい出会いがあるんじゃないかと思ったんですね」
監督のトライアウトで求めているのは“野球の能力”ではない
では――山根社長は伊藤監督のどこに惹かれたのだろうか?
「将来自分がどうなりたいかと言うことをしっかり持っていたのと、監督になったときに、自分はこういう経験をしてきたからこんな貢献ができます、ということを明確に話していたのは、非常に魅力的だと思いました。
それは一般社会で就職活動した経験があれば、当たり前の話だとは思います。でも、野球界の人はそれよりも“いくらもらえるんですか”といった話になりがちで、自分を売り込むプレゼンができない人が多かったんですね。監督のトライアウトで求めているのは“野球の能力”じゃないことが理解できていない人が多かったんですね。そんな中で伊藤悠一さんは、よくできているな、と色川冬馬GMと話が一致した。そこで“一緒にやっていこうよ”となったんです」