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将棋PRESSBACK NUMBER
藤井聡太竜王が渡辺明名人に勝っても「自信のない展開」と話してた…「難しい将棋」ってどんな感覚?〈高見泰地七段に聞く〉
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byJIJI PRESS
posted2023/04/23 06:00
名人戦第1局での渡辺明名人と藤井聡太竜王(代表撮影)
高見 そういう意味では名人戦第1局という特別な空気感の中に、駆け引きがあったのだと感じます。序盤の1日目時点で、お互い一手一手の選択肢が2、3通りずつある――という状態で、先ほども言いましたが……これはとても難しい展開だぞ、と繰り返したくなるほどです(笑)。一手ごとに時間を使っていく展開になりながらも、1日目は本当にうまくバランスが取れて、いい勝負のまま2日目を迎えた。この辺りにおふたりの地力を感じます。
――2日目に入って以降はどのように見られていたでしょうか?
高見 渡辺名人の封じ手である「7九玉」は自然な手でした。そこから渡辺名人視点で見ると〈銀が出ていって3筋を狙う〉、いくぞいくぞと見せつつ、後手が動いてくるのをキャッチする意図がありました。かなり高度な指し方ですが、それに対して後手の藤井竜王は歩を垂らすなど、端から動いた。それを受けて先手も反撃して……という展開になりました。将棋は基本的に、それぞれ飛車がいる筋が一番攻めとして機能しやすい。だから先手は2筋、後手は8・9筋のあたりを攻めていきました。ただこの形は、攻守の兼ね合いにおいて――本当に総合力を問われる将棋だと思って見ていました。
「お互いに懸念点がある感じ」で進んでいった
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――対局後、藤井竜王と渡辺名人の話を聞いていると「自信のない展開」「苦しい局面が多かった」との表現が聞こえてきました。このあたりの心境を推察すると、どのようなものなのでしょうか。
高見 お互いに懸念点がある感じでしょうね。先手としては9筋の香車が厳しい状況なのですが、その代償として銀は進出できる。一方で後手側から見ると、銀に進出されて無傷ではないけれど、自分としては反撃のメドを立てていて、歩を補充して58手目に「8六歩」とすることで、攻めの起点を作れる。その状況をお互いが織り込んでいるゆえに、バランスが取れているんですね。片方が一方的に攻めかかるような、わかりやすい展開ではない分だけ、2日目に入っても、すごくいい勝負が続いていたんです。
自分だけ攻める、自分だけ受けるという展開になった場合、〈とにかくもう、こうしていこう〉という心構えやプランができます。名人戦第1局については何か自分がやりたい手を指す場合、何かしら自陣が痛む出来事を許容しなければいけなかった。だからおふたりとも、長考しあいながら先を考えて進めた将棋になったのだと思います。