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レッドブルとのジョイントでフォードが22年ぶりにF1復帰、その狙いと課題とは《レッドブルとホンダの蜜月は2025年限り》
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2023/02/19 11:00
1968年にダブルタイトルを獲得したロータス49に搭載された、名機中の名機フォード・コスワースDFV
そのフォードが2004年以来、22年ぶりにF1に復帰することになった最大の理由は、F1で動力源として使用しているパワーユニット(PU)に関するレギュレーションが2026年から変更されるからだ。F1は2030年までにネット・ゼロ・カーボンを達成するという目標を掲げており、2026年に導入されるPUは現在よりも環境に配慮した次世代型となる。また、燃料についても100%持続可能なものが導入される。
この次世代型PUの導入に触発されたのはフォードだけではない。環境に優しいエンジンを開発している自動車メーカーにとってF1界のこうした取り組みは大きな魅力で、昨年の8月にはドイツの自動車メーカーで、ル・マン24時間レースで5連覇を含む通算13勝を挙げた名門アウディも2026年からのF1参戦を表明した。
ただし、過去のF1における成功において、実はフォードは技術的に直接関与していない。フォード・コスワースDFVエンジンは、もともとコスワースがチーム・ロータスを率いるコーリン・チャップマンの依頼を受け設計・開発を進めていた。しかし、コスワースは資金難に陥り、それをフォードが資金援助して完成に至った経緯がある。つまり、コスワースが作ったエンジンに「フォード」のバッヂがついた代物だった。
F1参戦で得られるメリット
だが今回は、フォードも技術的に関与しなければならなくなった。
2026年にレッドブルに搭載されるPUも、じつはフォードではなく、RBPTが開発・製造することになっている。RBPTはホンダがF1参戦の終了を発表した直後にレッドブルが自社でPUを製造すべく立ち上げた組織で、すでに500人以上のスタッフが従事して2026年に向けたPUの開発を始めている。スタッフにはライバルのメルセデスから引き抜いた大物エンジニアも含まれている。彼らがメルセデスから独立してメルセデスAMG・ハイパフォーマンス・パワートレインズ(HPP)を立ち上げてF1のPUを開発してきたように、レッドブルもまた自動車メーカーに負けないPUの開発を目指している。
だが、PUの動力源はエンジンだけではない。回生エネルギーをバッテリーに充電し、電気モーターによるアシストもまた重要なパワーとなっている。しかも、2026年から導入されるPUの電力の利用比率は50%まで高められ、その性能を大きく左右する。RBPTにはその技術がまだない。だからこそ、レッドブルはフォードをパートナーに選んだのだ(ホンダとの2026年以降の関係性は、バッテリーのみの供給を望んだレッドブルに対し、ホンダがPU全体の供給にこだわったため物別れとなったと思われる)。