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エフフォーリア電撃引退の原因が“心房細動”だけではない理由…まさかの競走中止も、適切だった横山武史の判断「陣営や騎手を責めるのは間違い」 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph bySankei Shinbun

posted2023/02/14 17:00

エフフォーリア電撃引退の原因が“心房細動”だけではない理由…まさかの競走中止も、適切だった横山武史の判断「陣営や騎手を責めるのは間違い」<Number Web> photograph by Sankei Shinbun

2月12日の京都記念(GII)にて心房細動を発症し、14日に電撃引退が発表されたエフフォーリア

横山武史の判断、処置は適切だった

 競走馬にときおり発生する、この「心房細動」とは、どのようなものなのか。

 JRAのサイトにはこう記されている。

「心臓に異常な電気信号が起こり、心房が規則正しいリズムを失う不整脈の一種。競走馬がレース中に発症すると、血液を全身に上手く送り出せなくなるため、急激に失速する。ヒトの心房細動と異なり、全く異常のない競走馬がレース中に突如として発症し、特に治療を行なわなくても治癒するものがほとんどである」

 突発的に、心臓の一部だけが動いている状態になって血液が循環されなくなり、ガス欠でエンストするように止まってしまうのである。

『競走馬ハンドブック』(日本ウマ科学会編)によると、馬は家畜のなかでも不整脈が多い動物として知られているのだという。

 そして、競走馬に発生する不整脈は運動によって消失するものがほとんどだというから、下馬してすぐに曳き運動をした横山武史の判断は適切だったと言えるだろう。直前まで走っていたのだから、常歩(なみあし)でのクールダウンも必要だし、その前に、胴体を締めつける腹帯を素早く解いて、圧迫するものを取り除いてやったところにも、彼の優しさと冷静さが見て取れる。

これまでも心房細動に見舞われた馬たち

「心房細動」と聞いて、筆者がまず思い出すのは、1988年の桜花賞、オークス、エリザベス女王杯の牝馬三冠すべてで好走したシヨノロマンである。主戦騎手は武豊。心房細動を発症したのは、牝馬三冠を走った翌年、89年の朝日チャレンジカップだった。当時、人気が集中する馬への措置となっていた単枠指定になっていたのだが、最下位の12着に終わった。にもかかわらず、翌月、公営の中京で行われた名古屋市制100周年記念をレコード勝ちしたものだから、驚いた。

 もう1戦してから繁殖牝馬となり、7頭の仔を産んでいる。

 ほかにも心房細動を発症した馬には、下記のような馬たちがいる。

 快速馬ネーハイシーザーは、1993年の菊花賞で心房細動を発症して最下位に敗れた。翌94年の京都金杯で復帰して3着となり、同年の大阪杯、京阪杯、毎日王冠、そして天皇賞・秋を勝った。

 ダートで活躍したヴァーミリアンは、4歳時の2006年、東海ステークスで心房細動を発症して最下位に終わったが、翌07年の川崎記念でGI初制覇を遂げ、合計9つのダートGIを制した。

 最近では、2021年の札幌記念で心房細動を発症したステイフーリッシュが、翌22年にサウジアラビアとドバイで重賞を勝っている。

 また、22年のオールカマーで心房細動のため最下位に終わったソーヴァリアントは、次走のチャレンジカップを制し、同レース連覇を果たした。

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