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那須川天心は世界王者になれるのか?「簡単じゃないけど…」「山中慎介さんに近いかも」葛西裕一と京口紘人が語る“ボクサー天心の可能性”
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渋谷淳Jun Shibuya
photograph byRyo Saito
posted2023/02/10 11:02

那須川天心に初めてボクシングを指導した葛西裕一と、2階級で世界を制した京口紘人が、“プロボクサー天心”の可能性について語った
ようはボクサーとしての那須川はまだまだこれからということだ。それでもなお、「今でも日本王者とか東洋王者くらいの力はあると思う」というのだから末恐ろしい。葛西は天才格闘家の将来についてこう期待を込めた。
「今まではセンスでやっていたと思うんです。これから体重移動とか、フェイントとか、ボクシングの細かい技術を覚えていけば、もっともっと倒せる選手になると思う。ボクシングは簡単じゃないけど、世界チャンピオンになってほしいし、なれると思う。才能はあります。天才ですから」
現段階で日本、東洋王者級と評価は一致
現役世界王者は那須川のボクシング転向をどう見ているのだろうか。取材に応じてくれたのはWBAライトフライ級スーパー王者の京口紘人。無敗のまま2階級制覇を達成し、ここ2試合は連続して海外防衛を成功させている充実の王者は「そもそも違う競技にチャレンジしようという姿勢が素晴らしいですね」と那須川の決断に敬意を示し、続いてその理由を説明した。
「キックの3ラウンドは短距離走。それで力を出し切るのは僕からするとすごいこと。逆にボクシングの12ラウンドは長距離走。それぐらい2つの競技は違う。キックの選手と話す時、冗談で『ボクシングに来れば?』って聞くと、みんな『無理です』って答えますよ。僕は小学生の時、空手をしてましたけど、今からキックに転向するなんて絶対に無理。それくらい差があるとみんな分かってるんです。それを天心はやろうとしている。すごいことだと思います」
京口は1年前、YouTubeのコラボレーション企画で那須川とスパーリングをし、パンチをミットで受けた。真剣勝負ではないので、「あれで天心のボクサーとしての可能性は分からない」と断った上で、那須川の潜在能力には目を見張るものを感じたと明かす。
「今まで手を合わせたキックや総合の選手の中で一番ボクサーらしい動きだと感じたし、ポテンシャルはすごくあると思う。強かったのはジャブとストレート。ジャブはTHE MATCHでもよく使っていたけど、ボクシングで前の手を使える選手は強いです。ストレートはブンブンというよりはすき間をスコーンと打ち抜くタイプだと感じました。同じサウスポーですし、世界を12度防衛した山中慎介さんに近いスタイルかもしれません」