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那須川天心24歳の一挙一動に黒山の人だかり…ボクシング界は「宝物」をどう迎え入れたのか? 神童の“異例すぎるプロテスト”の内幕
posted2023/02/11 11:06
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
キックボクシングのスター選手でプロボクシングへの転向を表明していた那須川天心(帝拳)が9日、プロテストに合格してB級ライセンスを取得した。テスト会場となった後楽園ホールにはNHKをはじめとする大手メディアやネット媒体から100人に迫る報道陣が詰めかけ、“神童”の新たな挑戦への注目度の高さを示した。
金メダリスト・村田諒太に勝るとも劣らない注目度
テストの期日が明らかになったのが前日だったにもかかわらず、後楽園ホールにはテストが始まる1時間以上前から多くのメディアが詰めかけた。通常ならテスト会場には多くのルーキーが集まるが、この日の受験者は那須川だけ。2000人近くを収容する会場が混乱することはなかった。
とはいえ那須川が登場し、計量、筆記試験、検診といったメニューをこなすたびにカメラマンがその姿を囲んで黒山の人だかりという状態だ。かつてこんなことがあっただろうか。思い出すのはちょうど10年前、2013年4月の村田諒太(帝拳)のプロテストだ。
前の年に開催されたロンドン五輪で日本史上2人目となる金メダルを獲得していた村田のプロテストは売り出し中だった井上尚弥(大橋)のデビュー3戦目のイベントに組み込まれ、この模様はフジテレビで生中継された。スタイルが違うので比較はできないが、注目の集まり方は村田に勝るとも劣らないと感じさせた。
3ラウンドのスパーリングは日本バンタム級1位の南出仁(セレス)とのサウスポー対決だった。南出は駒澤大でアマチュアキャリアを積んで、3月には日本タイトルマッチを控えるホープだ。那須川は実力者を相手に「パンチをもらわないのが一番」との言葉通り、反応の良さとフットワーク、ヘッドスリップで南出にクリーンヒットを許さず、攻めては鋭いジャブとカウンターを披露。上出来の“デモンストレーション”でテストを終えた。