第99回箱根駅伝(2023)BACK NUMBER

「生まれ変わったら原監督と大八木監督のどちらのもとで主務やりたい?」 青山学院大学と駒澤大学の主務を経験したOBが今だから話せる本音対談 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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posted2022/11/25 15:00

「生まれ変わったら原監督と大八木監督のどちらのもとで主務やりたい?」 青山学院大学と駒澤大学の主務を経験したOBが今だから話せる本音対談<Number Web>

主務時代の野川寛太氏(左)と青山尚大氏(右)

運営管理車の中では、暇な時間は1秒もない

――お二人が主務になったことでチームのやり方とか、ルールとかを変えたことはありましたか。

青山 変えましたね。私が3年生の時、下級生が駅伝を走れないのは、日々やらなくてもいいようなことをやっているからなんじゃないかっていうことを一つ上でキャプテンの原嶋(渓)さんと話をしたんです。それをなくしていこうという話になり、私たちの代の神戸(駿介)がキャプテンになってからかなり変わりました。先輩が寝る前に布団を敷いて勝手に寝たらダメとか、そういう走るために必要のないルールはすべて撤廃。それは、田澤の存在が大きかったと思います。高校時代にあれだけ結果を残してきた選手をここで潰すわけにはいかない。必要最低限のことはやってもらい、あとは走りに集中してもらう。その時、ちょうど監督も選手との接し方が変わってきたばかりの時で、そういうタイミングの良さもありました。

野川 青学大は駒大さんのように伝統があるわけではないので、先輩の邪魔をしないようとかそういうルールはないです。青学大はすごくシンプルで、外出の際は自分の名前が書かれた札を裏返して寮を出るんですけど、そんな感じで、なぜこのルールがあるんだということを選手全員が答えられるルールしかないですね。

――箱根駅伝といえば、運営管理車からの声掛けも名物のひとつになっています。車内は大変だということをよく聞きますが、実際はどんな感じですか。

青山 車内では、暇な時間は1秒もないです。タイムとか、各大学のデータをリアルタイムに集めて監督へ伝えていくので、常に計算ばっかりしていますね。同じような感じだよね。

野川 そうですね。車に乗る前からデータを集めて、車内ではそのデータと照らし合わせながら監督にタイム差とかの話をしています。そこでタイムがいいと機嫌がよくなります。前回の箱根駅伝でいうと3区で1年生の太田蒼生(現2年生)がトップに出た時は、監督というよりはいち駅伝ファンのように「これで勝ったぞ」みたいな感じで喜んでいました(笑)。

青山 順位の上下で車内の雰囲気は全然違うよね。大八木監督は感情がもろに出るタイプなので、タイムが落ちていくと機嫌が悪くなるし、いいタイムで走っていると絶好調になる。車に乗って一番印象に残っているのは、私が3年生の箱根駅伝で、ちょうどMGCで中村匠吾さんが優勝して東京五輪を決めた時だったんですが、1区の中村(大聖)さんが六郷橋で遅れたんですよ。その時、監督が「匠吾は、このラスト3キロ上げて終わったぞ。おまえもできる」って声をかけた時は泣きそうになりました。「男だろ」も有名ですけど、みんな、監督の声に反応しますし、そういう声掛けが力になっているのは感じるよね。

――主務をやってきて報われたなと思う瞬間は、どんな時ですか。

青山 箱根駅伝の総合優勝ですね。私が2年生の時は予選会に出るようなチームだったんです。でも、私が4年生になった時はチームがかなり強くなり、手応えもありました。6年間、学生三大駅伝の優勝から遠ざかっていたんですけど、全日本で勝って、箱根も絶対に勝つと決めていたので、そこで勝てたことは本当にうれしかったし、この時に主務ができてラッキーだなと思いました。

野川 箱根駅伝で総合優勝できたのは最高の経験になりましたし、それと同じように一人ひとりが頑張って、努力してきた姿を見てきているので、記録会や大会で1秒でもベストを更新してくれたこともうれしかったです。優勝という目に見える部分での喜びもあったんですが、目に見えない努力した姿を見られたことは主務になってすごく良かったと思っています。

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