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「コーチの存在をありがたく感じます」宇野昌磨24歳が“完璧ではない”NHK杯の演技を「ベスト」と表現できた理由
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2022/11/21 17:02
昨季の自己ベスト312.48に比べると30点以上差がある今季の自己ベスト279.76で優勝を決めた宇野。本人がフリーの演技後「ベスト」と語った理由は…
反映したい技術がトライしてもできませんでした
宇野にとってのグランプリシリーズ初戦のスケートカナダで優勝したあと、練習内容は思っていたものにはならなかったと言う。
「ジャンプをやっても、毎日違う跳び方になってしまって、反映したい技術がトライしてもできませんでした」
その日々に対しての苛立ちがあった。
「思い通りにいかない苛立ち、もどかしさが公式練習に出ていました」
ランビエルは練習後、「話をしよう」と宇野を食事に誘った
気持ちを立て直せたのは、コーチのステファン・ランビエルの存在があったからこそだった。
宇野の様子を見守っていたランビエルは練習後、「話をしよう」と宇野を会場内のレストランに誘った。そこで言葉をおくった。
「完璧を求めすぎないように。完璧というのは一つひとつやった先に待っているもので、目指すものではないよ」
練習中もいつも以上に言葉をかけてくれていた。
「こういうとき、コーチの存在をありがたく感じます」
宇野がフリーの直前に修正したエッジ
ただ練習が順調ではなかったことにかわりはなく、さらに直面したのが靴の問題だった。公式練習、ショートの日と、エッジの位置がうまく決まらず、何度も変えて試行錯誤していたが、フリーの6分間練習で4回転トウループを失敗した際、「左足のエッジの位置が違うな」と感じた。
「ころころ変えていた影響で、あまりにも違う方向へ行ってしまった、と感じました。(この位置では)絶対に無理だと思いました」
幸い、滑走まで4人の選手を挟むため修正を行う時間はあった。