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最強軍団・ソフトバンクが泣き崩れた「10.2最終決戦」…2つの史上初が重なった悲劇と“歓喜の8年前”は何が違ったのか?
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph bySankei Shimbun
posted2022/10/05 11:03
運命の「10.2」決戦。マジック1で臨んだソフトバンクに待っていたのは、プロ野球史上初となる、記録と記憶に残る悲劇の幕引きだった
天下分け目の大勝負となった時、ソフトバンクは必ずといっていいほど勝ってきた。それも、当たり前のように――。
しかし2022年の今シーズンは、残り2試合でM1としながら悔し涙に暮れる結果となった。
涙、涙、涙…藤本監督「選手はよく頑張った」
まさに涙の敗北だった。10月1日の西武戦は延長11回、今季絶対的セットアッパーとして大活躍を見せてきた藤井皓哉が山川穂高に特大の41号サヨナラ2ランを浴びた。藤井はマウンドで茫然とし、マスクを被っていた海野隆司はその場で崩れ落ちた。チームメイトたちが客席へ挨拶を行う中、藤井と海野の2人はずっと号泣しっぱなしだった。
そして10月2日のロッテ戦は2-0とリードして迎えた6回裏、2番手・泉圭輔がロッテの山口航輝に16号逆転3ランを打たれた。V逸の敗戦投手となった泉は試合後、そのショックのあまり自力で歩けないほどだった。
敗戦から18分後、鷹番記者の代表取材に応じた藤本博史監督は気丈にふるまっていた。
「悔しいけどね、選手は一年間よく頑張った。プレッシャーのある中で、一生懸命やってくれたのがこの結果だった。もう誰がどう、こうじゃない」
藤本監督の言うとおり、藤井や海野や泉が責任を背負い込む必要はない。藤井はあの日が今季55試合目にして初黒星で、防御率もそれまで0点台だった。海野は正捕手・甲斐拓也の背中を追いかけながら着実に成長し、今季は自己最多の47試合に出場した。泉も「ジョーカー的な存在で良い場面で抑えててくれた」と藤本監督が信頼を寄せていたからこそ、マウンドへ送った投手だ。
藤井26歳、海野と泉は25歳。まだ伸び盛りの選手といえる。