核心にシュートを!BACK NUMBER
「そんなキャラじゃないよ、俺は!」「サブで何が楽しいの?」なぜ原口元気は“代表戦ベンチで鼓舞→絶賛の声”に戸惑ったか
posted2022/09/27 11:08
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Kiichi Matsumoto/JMPA
日本代表の6月の国際Aマッチがどんな形で終わったか覚えているだろうか。キリンカップ決勝戦、チュニジア相手に0-3の大敗を喫し、批判が吹き荒れた。
そのなかで数少ないポジティブな話題が、原口元気のアクションだった。
そんなところだけが評価されるようでは……
コロナ禍以降は、代表チームに密着した「Team Cam」というムービーがJFAの公式YouTubeチャンネルで公開されるようになった。6月シリーズの最終回となるVol.8では、チュニジア戦で先制点を奪われた直後の日本ベンチを映した“ある映像”があった。その中心にいたのが原口だった。
相手に与えられたPKの行方をベンチから出て見つめていた原口は、PKが決まったのを見届けると、一度、ベンチに腰を下ろした。
しかし、試合再開前にピッチでうなだれそうになる選手たちがいるのを見つけると、慌てて立ち上がった。
そして、再びベンチを飛び出し、両手をたたき、腕を回し、チームメイトを鼓舞していった――。
それがファンからメディアに至るまで、高く評価されることになった。
日本人的な美徳や価値観とも密接に絡む行動で、滅私の精神ともつながる。己のエゴを捨てて、集団や他人のことを考える。日本人はやはり、そういうものが好きだ。
評価してもらえるのはやぶさかではないものの、原口には戸惑いもあった。そこを評価されるのか、と。
「あれは自然なアクションというか、特別に何かを考えてやったわけではなくて。下を向いている選手もいたから、『まだ、まだ、全然できるでしょう』と鼓舞するつもりで。ただ、それってウニオン(・ベルリン)でやっている、いつも通りのことにすぎないんだよ」
そして、こう続けた。
「そんなところだけが評価されるようではダメだね。いや、ダメというか、まだまだ……」
“不満”を口外することがない原口のエピソード
あの試合では、森保一監督が原口と田中碧に対して、それぞれ前半と後半の45分ずつ出場時間を与える予定だと伝えていた。だから、後半の原口はベンチから声を出すことによってしか、チームの助けになれないことを理解していた。
ただ、原口が最優先で考えるのは、いつも変わらない。