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「そんなキャラじゃないよ、俺は!」「サブで何が楽しいの?」なぜ原口元気は“代表戦ベンチで鼓舞→絶賛の声”に戸惑ったか
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2022/09/27 11:08
チュニジア戦での振る舞いが絶賛された原口元気。ただ彼のリアルな心の中とは……?
ピッチに立って、チームを助けること。
そんな姿勢を象徴するこんなエピソードがある。
ドイツに渡ってからの原口は監督の采配やチームメイトのプレーへの不満を口外することがほとんどない。一般的な選手と比べて驚くほど少ない。
サッカー選手だって、人の子である。一介の会社員が上司のグチを言うように、監督の采配に対して不満を口にする選手も少なくない。それは何も、監督と袂を分かつ覚悟で口を開くわけではなく、グチを吐き出し、スッキリして、翌日から頑張るという程度のものだ。
W杯最終予選での“賞賛”に原口が感じたこと
しかし、原口の方針は少し異なっている。
世の中には自分でコントロールできることと、コントロールできないことがある。だから、コントロールできることだけに集中する。監督の采配もチームメイトのプレーの精度も、審判の判定や試合日の天候も、選手はコントロールできない。それをわかっているから、彼は自分に矢印をむけている。
だから、ピッチに立てなかったとき、交代を命じられたあとには、人一倍悔しそうな素振りを見せる。そこからは決まって、こんな言葉とともに悔しさを吐露するのだ。
「交代になってチームをピッチ上で助けられないのが歯がゆい」
「歯がゆい」を「もどかしい」と表現することもある。
原口にとって最優先すべきなのはピッチに立ってチームを助けること。それが唯一にして、絶対的な基準だ。
だからこそ、自分の想いとは違う角度からの賞賛を聞いて、少しだけ残念に思うことがある。たとえば、今年の1月から2月にかけての代表戦だ。
カタールW杯アジア最終予選、中国戦とサウジアラビア戦は日本での連戦だった。そのため、2試合目の前には普段より1日多く、2日間の公開練習があった。その中で森保監督は疲労がたまっている選手たちに長時間の戦術練習を課すことはなく、コンディションを整えることを重視した。2日目もほとんどが1試合目にスタメンで出なかった選手たちのメニューだった。
「そんなキャラクターじゃないよ、俺は!」
そんな練習の様子を見たメディアが飛びついたトピックがあった。全力でボールを追いかけ、チーム練習が終わったあとにも自分を追い込む原口の姿勢だった。
「こんな状況でも腐らないのは立派だ」
大半はそういった声だったが、中にはこんなものもあった。
「チームへの献身的な姿勢が素晴らしい!」
「あのような態度を見せられるのだから、本大会のサブ組枠の一つは原口で確定だ」
そう主張するメディア関係者もいた。
ただ、あの行動が本当に“献身的な姿勢を示すため”のものだったのだろうか。原口はそれを表現しようと思って、あのようなプレーをしていたのか。