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原口元気31歳「どうして今が楽しいかわかるでしょ?」スピードだけでなく“判断も素早い”戦術眼を得た真相〈インタビュー〉
posted2022/09/27 11:07
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Satoshi Shigeno
「これまでインタビューを受けても、あまり説明したことがなかったからね。分析官とのやり取りの内容についても『サポートの種類があって……』くらいは話しても、ここまで具体的に話したのは初めてかもしれない。説明してもわかりにくいだろうなと思ったから、あまり話してこなかったんだけど。今回は、“あのシーン”があったからうまく伝えることができたかもしれない。
個人戦術的には、多分、すごく伸びてきていると思うんだ」
オフ期間のこと。原口元気が自主トレに向かう前、すでに頭のなかを整理できている状態でのインタビューだったからこそ、実りある時間となった。
個人分析官と二人三脚で磨いたサポートの意識
スペイン人の個人分析官と二人三脚で、個人戦術を磨くためのトレーニングに取り組み始めて3年になる。サッカー関係者にも、その取り組みに興味を示す人はかなり多い。今回は6月の日本代表戦でのアシストという、多くの人が目撃した題材をもとに、原口が口を開いた。
「あれは落としたボールに偶然上手く反応できた、ということではなくて。『5A』というサポートを意識したからこそ、できたもの。ずっと取り組んできたことが、出たわけで。これからの俺のキャリアでも、そういうものはアドバンテージになると思っているかな」(*原口と分析官の間では、サポートの種類を複数にわけていて、それが「3B」、「5A」などの名称がつけられている)
パラグアイ戦の先制アシストに見えた進化とは
原口が言及したのは、6月2日のパラグアイ戦。日本の先制点の場面だ。まずは、あのシーンを思い出してみよう。
前半36分、相手のロングボールを日本は自陣の低い位置で回収した。ここから、攻撃をビルドアップしていくことになる。GKのシュミット・ダニエルは、左サイドバックの伊藤洋輝へパスを出した。
伊藤はボールを受ける前に、首を振って前方の様子を確認した。そして、ボールが来ると、センターサークル付近の浅野拓磨へとロングフィード。これが攻撃開始の合図だった。
伊藤と浅野の中間あたりに位置していた原口は、自らの頭上をボールが通過する前の時点で、次の状況を予測していた。浅野の落としが「ワンバウンドになりそうだ」と判断して、ボールの落下点を計算し、一気にスピードを上げた。この動作により、ファーストタッチで(浅野の後方、原口から見ると前方にいた)相手選手を置き去りにするコントロールができた。
そして2タッチ目で、左前方にボールを転がして勢いを出した。3タッチ目で、右前方へスルーパスを送った。