核心にシュートを!BACK NUMBER
「そんなキャラじゃないよ、俺は!」「サブで何が楽しいの?」なぜ原口元気は“代表戦ベンチで鼓舞→絶賛の声”に戸惑ったか
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2022/09/27 11:08
チュニジア戦での振る舞いが絶賛された原口元気。ただ彼のリアルな心の中とは……?
個人的に手応えがなかったわけではないが、チームとしての戦いには危機感も覚えた。特に最終戦での負け方に。この先を考えると、9月に2試合の親善試合を含めた9日間の合宿があり、あとは大会直前に1週間程度の合宿と親善試合が1度しか組めないこともわかっていた。
「W杯初戦も、スタメンで出るつもりでいるよ」
だから、原口は最終戦の会場となったパナソニックスタジアム吹田からホテルへ戻る車のなかで早速動いた。チームメイトに声をかけた。
「このままで終わるのはイヤだよ!
前回のW杯のように直前の準備期間が1カ月もあるわけではないからこそ、もっと話そう。課題をそのままにして何となくカタールへ行き、あっという間に終わるのはイヤだから。俺はW杯で絶対に後悔したくないんだ!」
あとは関係者以外が見えない部分で、原口のことを知っている森保監督がどう考え、本大会の選手起用をどうするかにかかっている。
もちろん、原口が監督の考えをコントロールすることはできない。それがわかっているからこそ、原口はこう考えて、取り組んでいるのだ。
「俺はW杯の初戦も、スタメンで出るつもりでいるよ。もちろん、出られる保証があるわけではない。ただ、先発でピッチに立つ姿をイメージして、俺はそのための準備をしているから」
今はストレスに感じずに、力を抜いて
取り巻く人たちから「献身的」であり、「自己犠牲的」にも見えた原口のアクションは、原口が自分のやるべきこと、コントロールできることだけにフォーカスしていたからこそ、生まれたのだ。
ただ――。
ここまで触れてきたことが以前から変わらない原口の強みだとすれば、最近の原口にはもう1つ、つかんだものがある。
「若いころに客観的な判断ができなかったわけではないんだけど、最終的には客観的な判断をすっ飛ばして、『それでも俺の方がいいでしょ!』と監督に主張しにいくような部分はあったと思う。
ただ、そういうところで『あ、俺は昔より感情的になることが減ったな』とは感じるかな。チームのなかでの立ち位置が悪くても、今はストレスに感じずに、力を抜いて、出すべきところで力を出せるからという風に構えていられる感覚かな」
その余裕はキャリアを重ねたことで手にしたものだ。ハッキリしているのは、そうした余裕を生まれる上で、昨シーズンのウニオンで培ったものが大きかったということである。その取り組みについては、#3以降で取り上げていく。
<#3へつづく>
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。