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「馬房はお花で一杯になっています」愛された名馬タイキシャトル(享年28)が過ごした“幸福な余生”…晩年を支えたホースマンの思い 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byDaisuke Asauchi

posted2022/09/18 11:03

「馬房はお花で一杯になっています」愛された名馬タイキシャトル(享年28)が過ごした“幸福な余生”…晩年を支えたホースマンの思い<Number Web> photograph by Daisuke Asauchi

今年8月17日、28歳で天寿を全うしたタイキシャトル。晩年を支えたノーザンレイクの佐々木祥恵さんに、現在の思いを聞いた

メイショウドトウらとともに暮らしたノーザンレイクでの日々

 引退馬について書きながら、自分でも引退馬を共同で所有するようになった。それが今もノーザンレイクにいる「キリちゃん」ことキリシマノホシ(牝16歳、父サイレントハンター)である。

 2020年の7月半ば、藤沢和雄厩舎などで厩務員をつとめていた川越靖幸さんが代表となり、ノーザンレイクを開場した。その立ち上げから関わっていた佐々木さんは、当初、2020年一杯はライター業に専念して資金を貯めてから合流するつもりだったが、コロナ禍でトレセンへの出入りが制限されたため、すぐ新冠に移り住んだ。

「かつては生産牧場で、5年空いていたところに開場しました。新冠・タニグチ牧場社長の谷口貞保さんの力添えで、ここを借りることができました」

 開場時にいたのはキリシマノホシと、「芦毛ちゃん」と呼ばれている元競走馬・元繁殖牝馬の2頭。9月上旬に繁殖牝馬だったタッチノネガイ(牝20歳、父フレンチデピュティ)が加わり、21年7月、その娘のタッチデュール(牝13歳、父タップダンスシチー)もやって来た。既述のように、タイキシャトルが来たのはその前月、21年6月。2001年の宝塚記念を勝ったメイショウドトウと共にここで繋養されるようになった。

 つまり、ノーザンレイクには6頭の引退馬がいて、シャトルが旅立ち、5頭になった。

原稿料まで牧場の管理に遣って…

 現在は、佐々木さんと川越さんの2人で5頭の世話をしている。

「厩舎の雨漏りがひどくて、使える馬房は7、8馬房ですし、経営的には10頭くらいいた方がいいのですが、現在の体勢では繋養できるのは6、7頭が精一杯ですね」

 馬の生産や育成などはしておらず、引退競走馬がすこやかに余生を過ごせるようにすることが目的だ。

 基本的には馬の所有者から支払われる預託料が収入の柱となる。さらに、佐々木さんの原稿料も、牧場の維持・管理に遣われているようだ。

「見学者の方限定で、クリアファイルや、馬の手入れをして抜けた尻尾の毛で作ったストラップなどを販売したら評判がよかったので、グッズ開発もしていきたいですね。将来的には厩舎も建て替えたいですし、ウォーキングマシンもほしいので、クラウドファンディングのようなこともするかもしれませんが、現時点では未定です」

【次ページ】 なぜ、引退競走馬の世話をつづけるのか?

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