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「子供が生まれたら野球は…」出産から3カ月、片岡安祐美(35歳)も直面した「野球か結婚・育児の二択」という女性アスリートの現状
posted2022/09/17 11:01
text by
小泉なつみNatsumi Koizumi
photograph by
Asami Enomoto
――2022年6月に出産されて3カ月が経ちました。赤ちゃんとの生活はいかがですか。
片岡安祐美さん(以降、片岡) 「今日も一日なんとか命を守り抜いた」と、それしか考えてないですね。毎日その繰り返しで3カ月経ち、じゃあ次は4カ月目指して頑張ろう、という感じです。
――まさに命をつなぐ子育てですね。
片岡 息子が静かに寝ているとそれはそれで不安になって、そーっとお腹の上に手を置いて「よしっ、生きてる!」って確認してます。
――数々の厳しい鍛錬を乗り越えられてきた片岡さんですが、出産はまた違う大変さでしたか。
片岡 全身麻酔の帝王切開だったんですが、術後数日は本当に痛くて……これまで受けてきたデッドボールなんてたいしたことねぇや、と心の底から思いましたね。この先、選手にボールが当たったりしても「それぐらい大した痛みじゃないから頑張れ!」って言っちゃいそうで、監督として優しくできる自信がないです(笑)。
――全身麻酔で出産されたんですね。
片岡 前置胎盤というハイリスク妊娠だった上に、麻酔のアレルギーがあって下半身麻酔の薬が使えず、全身麻酔での出産になりました。だから気づいたらベッドの上ですべてが終わっていた、という感じです。
「普通の女性の身体ではない」という気持ちがあった
――過酷な妊娠・出産体験だったんですね。小学生から野球をはじめて一貫してアスリートの道を歩んできた片岡さんですが、競技にとってベストな身体を維持することと、妊娠・出産に備える身体の違いみたいなものを感じましたか?
片岡 妊活をはじめたのは33歳でしたが、35歳で出産に至るまでに2度、流産しました。それまではあまり深く考えてきませんでしたが、「普通の女性の身体ではないんだろうな」という気持ちもどこかにあったような気がします。
――不安を覚えるようなことがあったのでしょうか。
片岡 小学校のときからずっと男性と同じトレーニングメニューをこなしていたのですが、練習がハードだったからか、高校のときに生理が止まったことがありました。あと、それまで生理痛もまったくなかったのに、結婚した30歳前後から痛みを感じることが増えて。ただその一方で、自分は人より健康だとも思っていたんですよね。