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「子供が生まれたら野球は…」出産から3カ月、片岡安祐美(35歳)も直面した「野球か結婚・育児の二択」という女性アスリートの現状
text by
小泉なつみNatsumi Koizumi
photograph byAsami Enomoto
posted2022/09/17 11:01
今年6月に出産、育児と並行しながら監督業も続けている片岡安祐美さん
流産も経験「スポーツ選手としての生活はやめよう」
――アスリートは身体が資本ですからそうですよね。
片岡 体脂肪率は20%をキープ。栄養バランスを考えた食事を3食きちんととって、間食はお菓子じゃなくておにぎり、みたいな生活をずっとしていました。なかなか子どもを授からなかった原因がハードな練習やストイックな食生活なのかというとそれもわからないんですけど、アスリートゆえの過信があったと今では思います。
女子アスリートの先輩たちからも「子どもが欲しいなら早めに妊活を始めたほうがいいし、婦人科にはちゃんと行きなよ」とアドバイスをもらっていましたが、それも怠っていました。
――アスリートとしてではなく、妊娠のための身体づくりに意識を切り替えていった感じでしょうか。
片岡 一回流産した後、スポーツ選手としての生活はやめよう、と思ったんです。それまでは生活のすべてが「野球選手」として自分を成長させるためのもので、人より運動して食事管理も徹底して、たしかに数値上は健康だったかもしれません。でも、一度そんなアスリートとしての自分を手放して、食べてみたかったケーキを食べ、眠たかったら寝る。そうして自分の欲求に素直に生活してみたら体重も増えたし筋肉も落ちました。でも、いいやって思ったんです。
それが良かったのかはわかりませんが、結果的には無事に子どもを授かることができました。自分にとってその時間は、女性としての自分に向き合う時間だったのかもしれません。
「子どもが生まれたら野球は…」という不安
――今はもうすでに監督業に復帰を?
片岡 前置胎盤の診断を受けた妊娠6カ月から絶対安静と言われてしまったので、以来今まで一度もグラウンドには行けてないんですけど、リモートでミーティングをしたりオープン戦を組んだり、できる監督業はずっと続けています。
――妊娠・出産を経ても監督業は続けられるという道標ができて、あとに続く女性監督のお手本になりそうです。
片岡 残念ながら結果が伴ってないので、お手本になるかは微妙ですけど(笑)。
はじめは、選手やスタッフたちだけでやってもらうことも考えたんです。でも、私が出産を機に監督業をお休みしてしまったら、「子どもが生まれたら野球は二の次になっちゃったか」と思われてしまうのではないか……という気持ちもありました。