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〈現役引退〉福留孝介が今も忘れられない王貞治監督の一言とは 第1回WBCで世界一に導く劇的2ラン
posted2022/09/16 11:03
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
Naoya Sanuki
中日の福留孝介が今シーズン限りでの引退を表明した。45歳4カ月。日本球界最年長が、24年間の現役生活にピリオドを打つ。日米合算2450安打。同520二塁打。NPBでは首位打者を2度獲得し、2006年にはリーグMVPにも輝いた。
PL学園では3度の甲子園で3本塁打を放ち、世代最強打者として評価された。ドラフト会議では7球団が1位入札。交渉権を獲得した近鉄の佐々木恭介監督が「ヨッシャー」と会場に響き渡る声で叫んだのは、ドラフト史の名場面のひとつである。しかし、巨人あるいは中日を志望していた福留は、入団を拒否。入社した日本生命時代に出場したのがアトランタ五輪(1996年)である。
まだ全選手アマチュアで構成されたこの大会で銀メダルを獲得。初めてオールプロで臨んだアテネ五輪(2004年)にも選出され、この時は銅メダル。そして日本の野球ファンが福留と聞いて最も印象に残っているのは2006年の第1回WBCではないだろうか。
まだ「侍ジャパン」の呼称はなかったが、開幕前の3月に開催された大会にもかかわらず、日本を代表する侍が集っていた。野手の中心にはイチローがいて、投手の中心には松坂大輔がいた。率いたのは現役監督の王貞治。福留自身も前述のようにリーグMVPに輝くシーズンであり、まさにキャリアの絶頂期を迎えていた。
東京で第1ラウンド、アリゾナでの短期合宿をはさみ、アナハイムで第2ラウンド。ここで、のちのドラマの伏線となる事件が起こる。