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「子供が生まれたら野球は…」出産から3カ月、片岡安祐美(35歳)も直面した「野球か結婚・育児の二択」という女性アスリートの現状
text by
小泉なつみNatsumi Koizumi
photograph byAsami Enomoto
posted2022/09/17 11:01
今年6月に出産、育児と並行しながら監督業も続けている片岡安祐美さん
「野球か結婚の二択」という女性アスリートの現状
――これほど長期間ボールに触らないというのもはじめてのこと?
片岡 人生初ですね。選手もチーム関係者もそんな風に思うわけないってわかってるし、子どもと野球を比べるものじゃないということも理解しているつもりなんです。でも、野球というものが私にとってあまりに大きな存在で、今まで離れることがなかったから、私自身がきっと不安なんだと思います。
――そんな不安を抱えながらも、妊活しようと思ったんですね。
片岡 出産したら野球はどうなるんだろうという思いはもちろんありましたが、それ以上に子どもが欲しい気持ちが強かったんです。
女の子の後輩と喋っていても、「結婚を考えると野球もそろそろかな」という話になるんですよね。その子は現役バリバリで日本代表経験もあるトップアスリート。そんな素晴らしいキャリアをもってしても、「野球」か「結婚」の二択で考えてしまう現状がある。結婚、妊娠、出産を経てもユニフォームは着られる、が当たり前になったらいいですよね。
子守唄は「カッセカッセ」
――子どもを持つとキャリアが止まるような不安を持つ女性は少なくないと思います。
片岡 身体が資本のアスリートの場合、妊活のハードルは高くならざるを得ないですよね。でも、バレーボールの大友愛さんや荒木絵里香さんも子育てしながら選手生活を続けていらっしゃったし、東京五輪のハードルで小学生の子持ちの寺田明日香さんが活躍していたことも記憶に新しいです。
――先駆者がすでにアスリートの世界にもたくさんいる、ということですね。
片岡 私自身も野球というフィールドでそんなロールモデルになれたらいいですね。
そういえば、最後にグラウンドに行ったときはもうすでにお腹が出ていたからユニフォームが入らなくて、渋々ジャージで行ってたんです。だから、まずはマタニティ用のユニフォームが欲しいですね。
――片岡さんの夫は元プロ野球選手の小林公太さんです。アスリート夫婦ゆえ、お子さんにもなにかスポーツを?
片岡 とりあえず元気に育ってくれればそれだけで御の字です。ただし、授乳タイムは毎日高校野球を見せてますよ(注:取材は8月に行われた)。子守唄は「カッセカッセ」という甲子園のアルプススタンドの応援です。唯一子どもに望むとしたら、「野球を嫌いにならないで」ですかね。私が甲子園を見たいんで(笑)。《つづく》
(撮影=榎本麻美)
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