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大谷翔平の新球「えげつないツーシーム」をなぜバッターは打てないのか? 対戦選手、分析家もうなった“魔球に隠された秘密”とは 

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笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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posted2022/09/06 17:01

大谷翔平の新球「えげつないツーシーム」をなぜバッターは打てないのか? 対戦選手、分析家もうなった“魔球に隠された秘密”とは<Number Web> photograph by Getty Images

9月3日のアストロズ戦では、ツーシームを軸に見事な投球を見せた大谷。“その先”のピッチングも見据えていた

あの日、なぜ大谷はツーシームを“封印”したのか?

 だが、腑に落ちないこともあった。これだけの手応えを口にしながら2回以降はツーシームを1球も投げなかったのだ。直球、スライダー、カット、カーブ、スプリットの通常配球に戻し、7回を無失点での11勝目。なぜ、2回からはツーシームを封印する必要があったのか。

 その答えは1週間後のアストロズ戦で分かった。右打者7人が並ぶ同地区最強チームとの後半戦初対決。前半戦は2勝1敗、防御率1.08と抑えた相手は大谷対策に躍起になるに違いない。ブルージェイズ戦の2回以降ツーシームを封印した理由はアストロズの先乗りスコアラーを意識してのものか。初回に手応えを掴んだ時点で彼の意識はアストロズに向かっていたと感じる。

ツーシームはなぜ大谷にとって重要か?

 大谷には残り少ないシーズンの中で意識するものがはっきりと生まれた。そのひとつがメジャー初の規定投球回到達だ。アストロズ戦後、意識するものかと問われた大谷は「そうですね」と即答した。

 動く速球は打たせて取る投球に効果的であり、長いイニングを投げるためには有効な球種であることは言うまでもない。1試合平均、7回近くを投げなければいけない状況で規定投球回数到達への手助けとなり、ライバル封じへの新たな一手でもあった。

「Preparation」(準備)。大谷は既に次をも見据えている。次戦先発は10日(日本時間11日)、敵地でのアストロズ戦。今回のツーシーム多投の組み立ては次戦への布石でもある。横の揺さぶりから本来の直球とスプリットのパワー投法へと転じるのか。はたまた、左打者には1球しか投げなかった新球をキーポイントで効果的に配するのか。ひとつひとつの球種だけでも打者を圧倒する力がありながら、相手を見ながら幅広い組み立てができるのも大谷翔平の強み。MVP争いと規定投球回数。今の彼には戦う男として、目的がはっきりと見えている。残り約1カ月。楽しませてもらおう。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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