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大谷翔平の新球「えげつないツーシーム」をなぜバッターは打てないのか? 対戦選手、分析家もうなった“魔球に隠された秘密”とは
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2022/09/06 17:01
9月3日のアストロズ戦では、ツーシームを軸に見事な投球を見せた大谷。“その先”のピッチングも見据えていた
大谷はツーシームへの質問に“けげんな表情”で…
試合後、大谷自身も一定の手応えを口にしていた。
「比較的コマンドも良かった。動きも良かったと思います」
だが、ツーシームへの質問が集中すると、大谷はどこかけげんな表情も見せていた。それでも彼は丁寧に答えた。
「各球種、それは単体で使えるのもありますし、1打席から3、4打席ある中で、それぞれのつながりを考えて投げる球種でもあるので。選択肢のひとつかなと思います」
「ツーシームを打つのが得意な打者もいれば、そうでない打者もいます。同じ右バッターでも選手によって変わってくる。その都度に投げるチョイスはしています。ツーシームに限らず、その日によっていい球種、悪い球種もある。そことも相談しながら投げていくのがピッチングだと思います」
ピッチングはトータル・コーディネート。その選択肢がひとつ増えただけに過ぎない。彼はそう言いたげだった。
8月までは“持ってなかった”ツーシーム
話は今年の6月末に遡る。大谷は米国で1923年に創刊された世界初のニュース雑誌「TIME」のインタビューを受けた。同誌の公式ツイッターにも動画で登場し、直球、スライダー、カット、カーブ、スプリットの握りをファンに公開した。その際に「シンカー(ツーシーム)は?」と聞かれると笑いながら答えた。
「Sink? I don’t have Sink.」(シンカーは持ってないよ)
今季初めてツーシームを投げたのは8月15日のマリナーズ戦だった。狙いを聞かれると大谷ははぐらかした。
「別にいらないボールではないですし、必ず必要なボールでもないですけど、楽しく投げるために必要かなと思います」
それから12日後、トロントでのブルージェイズ戦。大谷は試合開始の第1投に初めてツーシームを選択した。打者は右の強打者スプリンガー。球速は96.9マイル(約156キロ)。初回にツーシーム5球を投じ、最速は98.4マイル(約158キロ)。投げたのは右打者ばかりだった。そして、試合後には満足げな表情を浮かべていた。
「ツーシーム自体は良かったと思います。動きも良かったですし、スピード的にもコースも申し分なかったと思います」