Jをめぐる冒険BACK NUMBER
浦和の“声出しチャント復活”に鳥肌が… 小学生からサポの伊藤敦樹「らしいな」、ショルツも小泉佳穂も興奮した“静寂のち大合唱”
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byHiroaki Watanabe/Getty Images
posted2022/08/17 06:01
埼スタに戻った浦和レッズらしいチャントの数々。選手たちも本来のバックアップを受けた
ピンチを凌いで反撃に転じた58分には『COME ON URAWA REDS』で選手たちの背中を押し。圧巻だったのは68分からの流れだ。カウンターからダヴィド・モーベルグがシュートを放つ。これは枠を逸れたが、その直後、『Boys in RED URAWA REDS』から『仕掛けろ浦和』へと畳み掛けてみせた。
サポーターはチームと一緒に戦っていて、チームを勝たせることしか考えていないということは、もちろん理解している。
ただ、北側ゴール裏からの歌声を記者席で聞いていると、極上のロックコンサートに来たような感覚に陥った。「次はどんなチャントだろうか」「おお、そう来たか」といった喜びがあるのだ。
“シナリオのような”チャントと大合唱に外国籍選手も…
2点をリードして迎えた86分、『Allez Allez Allez』が鳴り響くなかで、江坂任がダメ押しとなる3点目を決めると、ボルテージが最高潮を迎える。その後、相手のコーナーキックを凌ぐと、満を持してこの日初の『PRIDE OF URAWA』の大合唱と手拍子が起こるのだ。シナリオ通りのような展開に、気づけば鳥肌が立っていた。
ルヴァンカップ準々決勝第2戦は3-0で浦和の快勝に終わった。2試合合計4-1とし、浦和の準決勝進出も決まった。ファン・サポーターに挨拶をしながら場内を一周し終えて、何人かの選手たちがロッカールームに戻ろうとした、そのときだった。
コロナ禍以前から浦和の一員である西川や岩波拓也が呼び止め、チームメイトたちをピッチ中央へと促す。すると、メインやバックスタンドのファン・サポーターがタオルマフラーを掲げ始めた。
この日、声を出せるのは北側と南側ゴール裏だけだったから、『We are Diamonds』を歌うのは、スタジアム全体で声出しが解禁になるまで取っておきたいという思いがあったのかもしれない。
そもそも、元をたどれば、選手と一緒に歌うものでもなかった。
だが、選手がピッチ中央で整列し、メインやバックスタンドのファン・サポーターが、声出しは任せたよ、と言わんばかりにアクションを起こすと、しばらく経って北側ゴール裏から『We are Diamonds』の大合唱が始まった。
この1、2年に加入した、つまり、埼玉スタジアムでチャントを聞いたことのないアレクサンダー・ショルツが、モーベルグが、岩尾憲が、小泉佳穂が、感じ入ったような表情で、歌に合わせて体を左右にゆらしている。
それは、とても幻想的な空間で、崇高な時間だった。
あまりに素敵な光景だったから、アウェイチームの監督会見が始まる時刻にもかかわらず、記者席を立つことができなかった。
試合後、ショルツは興奮冷めやらぬ様子で、スタジアムの雰囲気を振り返った。