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「いま決断しろと言われたら断ります」小椋藍はMoto2残留の意思固く、中上貴晶が来季もMotoGPに継続参戦決定か
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2022/08/11 17:00
レースを通じて昨年からの成長をしっかり表現する小椋。Moto2参戦2シーズン目で王座に就けるか
戦いを終えた小椋に「今日は、どうだった?」と聞くと彼はこう答えてくれた。
「もう少し速さが欲しい。そうすれば、あと2つくらいはリザルトを上げられる。そうなれば最高なんですけどね。今年のアウグストは強くて安定している。無理していないから転ばない。自分もああいうレースができるようにならないと……」
小椋の言葉通り、あと2つ順位を上げるレースができていれば、今年はすでに5勝していることになる。そういう戦いが出来なければチャンピオンにはなれないし、Moto2を卒業できないと感じているのだろう。
Moto2クラスに上がってからの小椋は、最大のライバル・フェルナンデスとバトルになることが多かった。そのフェルナンデスがシーズン中盤に3連勝を達成、今季4勝目を挙げて総合首位に浮上した。フェルナンデスが所属するレッドブル・KTM・アジョは、これまで多くのチャンピオンを輩出し、毎年チャンピオン争いに加わる強豪チームである。チームが持つ豊富なデータと経験は、ヨーロッパラウンドに入ってからはっきりと結果に表れている。
一方、ホンダ・チーム・アジアにおける小椋は、Moto3クラス、Moto2クラスともにチャンピオン争いをしてきた唯一のライダーであり、チームとして比較できるデータは小椋自身のものだけ。これは無視できないハンディキャップである。それだけに小椋のライダーとしての評価は高く、MotoGPクラスへのスイッチが熱望される理由でもある。
タイトル争いの行方
今年は日本GPを含むアジアラウンドが復活したことも、小椋には少しだけ追い風である。僕は小椋の後半戦にMoto2チャンピオン獲得を期待するし、「いま、MotoGPに行くという決断はできない」という気持ちも尊重したい。
まだまだ伸び盛りの21歳。この夏休みには、日本GPの開催されるモビリティリゾートもてぎで全日本ロードST1000クラスに出場するCBR1000RR-Rに乗った。排気量はMotoGPマシンと同じであり、初乗りながらタイムもライディングも素晴らしいものだった。
セッションをこなすたび、そしてレースのたびに着実に前進する小椋を支えているのは、1番になりたいという志の高さと豊富な練習量。妥協しないことは、ある意味、頑固さにつながる。Moto2クラスでチャンピオン争いをする小椋のブレない言動は、コース上の走りをイメージさせてくれるし、これからの成長を期待させてくれるものだ。残り8戦。小椋はどんなタイトル争いを見せてくれるのだろうか。
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