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「毎週のように生理が…」女子体操・杉原愛子22歳が悩み、考えた“生理の問題”「レオタードには相当気を使う」「男性コーチにも知ってほしい」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAsami Enomoto
posted2022/08/08 11:01
五輪2大会出場をはじめ、日本の女子体操を牽引してきた杉原愛子。生理や体重管理など、女性アスリートと身体の問題について聞いた
「体重だけでは管理できない」女子体操界の大きな課題
女子選手の体脂肪率についての見解を、杉原を指導してきた武庫川女子大学体操部の大野和邦監督に聞くと、このような説明が返ってきた。
「女子体操界には長い歴史がありますが、体調をどのようにコントロールするかということに関して理論的に説明されてきただろうかという疑問が私にはありました」
大野監督は長い間、ジュニアの女子選手の指導に携わり、小学生時代の村上茉愛のコーチだったことでも知られている。
「例えば夏の暑い時に喉が乾いたから500mlの水を飲めば、体重は500グラム増えますが、飲まなければ体調が悪くなります。また、重さで考えると固形物を食べたら体重が増えるから、軽いスナック菓子の方がいいんじゃないかという発想にもなっていきます。
それに、筋肉は脂肪より重いので、筋量が増えて脂肪量が減ると体重は増えます。このように、本来なら体重計だけでは見えないものがあるのに、体重計だけでコントロールしようとする。その矛盾が、ジュニアの指導をしている時からずっと気になっていたのです」
長い間、適切な体調コントロール方法があるのではないかと考え、模索していた大野監督が2015年に着任した武庫川女子大学には、体組成を細かく計測できる環境があった。大野監督は迷わず、選手たちの体脂肪の定期的な計測に着手し、体調コントロールの新たな指標づくりをしていった。
大野監督には、「学生がこういった視点を持って現役生活を過ごすことで、卒業後に指導者になった時に、体重のみで管理をするという環境から少しずつ脱却できるんじゃないかなと思っているのです」という狙いもある。その考えは杉原にしっかりと受け継がれている。《#3へつづく/#1から読む》
(撮影=榎本麻美)
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