オリンピックPRESSBACK NUMBER

「毎週のように生理が…」女子体操・杉原愛子22歳が悩み、考えた“生理の問題”「レオタードには相当気を使う」「男性コーチにも知ってほしい」 

text by

矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

PROFILE

photograph byAsami Enomoto

posted2022/08/08 11:01

「毎週のように生理が…」女子体操・杉原愛子22歳が悩み、考えた“生理の問題”「レオタードには相当気を使う」「男性コーチにも知ってほしい」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

五輪2大会出場をはじめ、日本の女子体操を牽引してきた杉原愛子。生理や体重管理など、女性アスリートと身体の問題について聞いた

 また、選手へ向けても「生理不順で生理が来ない時は、来ないから楽だと思うのではなく、体に対して悪いサインでもあることを知っておくべき」と訴える。

 選手が生理時の体調についてコーチにしっかりと言えるような環境は、どのようにして作っていけば良いだろうか。

「私は比較的気にすることなく言えるのですが、それは、自分を守るためだからです。生理で集中力が落ちるとケガのリスクもありますから。それでも男性コーチには言いにくいという人もいると思いますが、直接言いにくいなら別の誰かに頼んで伝えてもらうような体制を日頃からつくっておくことが望ましいと思っています」

毎週のように生理が来ることもあった

 杉原には生理の問題で苦い記憶がある。東京五輪の団体出場権が懸かっていた2019年秋の世界選手権前に左足首をケガ。さらに2020年春には左足をかばって右足を疲労骨折したのだが、その原因の一つは体重増加だった。

 杉原はもともと生理が重いという悩みを持っていたが、2019年は生理不順が重なり、酷いときは毎週のように生理が来ることがあった。そのため貧血の症状にも苦しんでいた。そこで生理不順の改善のためにピルを飲んだところ、体重がいきなり1、2キロ増えてしまったのだ。

 ピルは体質に合う人と合わない人の差が大きいもの。杉原はピルをやめ、栄養士やトレーナーの助言を受けながら、筋肉量を保ったまま体重を落とす取り組みを始めた。これが成功した。

女性アスリートと体脂肪率の重要な関係

 この時に生かされたのが、武庫川女子大学体操部で行なっている「体脂肪量・体脂肪率・体重」の定期計測だ。杉原は同大学に入学した2019年4月から毎月1回、体組成を計測し、それらの数値と、練習時のパフォーマンスを主観と客観で評価したものを照らし合わせ、ベストパフォーマンスを発揮するための脂肪量を編み出した。

 それによると、杉原の場合は、体脂肪量が2.7~3.3キログラムの間をキープしていればベストパフォーマンスを発揮できるということが分かった。実は、この脂肪量を体脂肪率に換算すると6~7%。女性としてはかなり低く、一般的に言われることの多い「10%以下は危険」という数値を大きく下回っている。しかし、今は生理が毎月ただしく来ている。

「私の場合は筋肉量がしっかりとあるので、体脂肪が少なくても体が正常に機能していると言われています。やはり、健康な体のためには体脂肪だけじゃなくて、筋肉量も必要です。体重が増えたからといって、無理して脂肪だけを落とすようなダイエットは良くありません」

【次ページ】 「体重だけでは管理できない」女子体操界の大きな課題

BACK 1 2 3 NEXT
#杉原愛子
#武庫川女子大学
#リオデジャネイロ五輪
#東京五輪
#オリンピック・パラリンピック

体操の前後の記事

ページトップ