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「大きなことを成し遂げたい。五輪金メダルと世界新記録です」世界陸上で織田裕二も興奮しながら振り返った“16歳のサニブラウン”が語っていた夢
posted2022/07/18 17:02
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
歴史の扉を開いた。
7月16日(日本時間17日)、世界選手権男子100m決勝、サニブラウン・アブデルハキームは世界選手権史上初、オリンピックと合わせると1932年以来のファイナリストとなった。
その決勝を7位で終えたあと、大会放送のメインキャスターを務める織田裕二とこのような会話があった。
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「最初に会ったときの約束覚えてる? 16歳のとき、初めてスタジオに遊びに来てくれて。そのときテレビカメラのないところで『世界一になります』、俺にそう言ったんだよ」
「いやあ、覚えてないですね」
サニブラウンは笑顔で返したが、振り返れば、あの時の目標があってこそこの日があった。
16歳で宣言していた金メダルと世界新記録
サニブラウンが脚光を浴びたのは2015年、織田の言葉にある16歳、高校2年生のときだ。
高校生としては戦後初めて日本選手権の100、200mの両種目で2位と表彰台に上がり、世界ユース選手権の100m、200mで優勝する。200mのタイム20秒34はウサイン・ボルトが保持していた20秒40の大会記録を塗り替えるものであり、この年代の世界記録20秒13に次ぐ歴代2位であった。さらに北京での世界選手権200mにも出場、準決勝に進出したのである。
「2つの金メダルは狙っていたとおりですが、もっと大きなことを成し遂げたいと思っています。オリンピックの金メダルと世界新記録です」
世界新記録とは、ボルトが2009年に打ち立てた9秒58の更新にほかならない。織田が明かしたように、当時から世界一への意志が強かったのがうかがえる。だから世界ユースからの帰国後、9秒台への意識を問われた際にもこう答えている。
「通過点だと思っています」