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「大きなことを成し遂げたい。五輪金メダルと世界新記録です」世界陸上で織田裕二も興奮しながら振り返った“16歳のサニブラウン”が語っていた夢
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2022/07/18 17:02
世界陸上2日目、男子100m決勝に出場し7位となったサニブラウン・アブデルハキーム
「こんなところで満足していられないので」
迎えた世界選手権では予選でスタートのリアクションタイム0.112秒と「自己ベストです」という好スタートがあり、9秒98と自身3度目の9秒台をマークし好発進する。しかも日本選手では初めて向かい風の中で出した9秒台だった。準決勝では1組で走り3位、タイム順により、決勝に進んだのである。
「独特な緊張感がありました」
サニブラウンはレースを振り返って言葉を発した。
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「準決勝ほど緊迫していなかったですね。みんな準決勝を抜けよう抜けようとなって、けっこう緊迫していたので」
日本の陸上の歴史を塗り替えたことについてはこう語っている。
「まずまずという感じです。でも、こんなところで満足していられないので」
その言葉で、あらためて2015年に語った「世界一」という抱負が思い出される。
サニブラウンにとっては、ファイナルも過程
サニブラウンは2017年にフロリダ大学に進学。その後プロに転向し、「タンブルウィードTC」で練習に打ち込んでいる。東京五輪200mで金メダルを獲得したアンドレ・ドグラス(カナダ)、今大会100mで銀メダルのマーヴィン・ブレイシー(アメリカ)、銅メダルのトレイヴォン・ブロメル(アメリカ)ら、錚々たる選手がそろう。その中に身を置き、トップスプリンターたちを肌身に感じながら練習していくことを決めたのも、目標を漠然とした憧れにとどめず、かなえるための行動をとってきたことを示している。その年月で積み重ねたトレーニングの成果と、ヘルニアの回復というタイミングが合致して、ファイナリストへとたどり着くことができた。
織田との会話の中で「覚えてないですね」と笑ったサニブラウンは、こう続けている。
「まだその過程なのかな」
そう、サニブラウンにとっては世界選手権初のファイナルも過程にすぎない。
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