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「大きなことを成し遂げたい。五輪金メダルと世界新記録です」世界陸上で織田裕二も興奮しながら振り返った“16歳のサニブラウン”が語っていた夢
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2022/07/18 17:02
世界陸上2日目、男子100m決勝に出場し7位となったサニブラウン・アブデルハキーム
ボルトと比較されることも多かった
ただし、その後は順風満帆というわけではなかった。上向きの矢印と下向きの矢印とを繰り返した。
2016年のリオデジャネイロ五輪は故障の影響で代表入りを逃した。2017年の世界選手権では200mで7位入賞。ボルトより年少でファイナリストになったことでボルトと比較されるケースが再び目立つようになった。
2019年5月には、アーカンソー州フェイエットビルで開催された大会の100mで日本歴代2位となる9秒99をマーク、桐生祥秀に次ぐ2人目の10秒の壁を破った選手に。6月にはテキサス州オースティンでの大会で再び10秒を破る9秒97と当時の日本新記録を樹立。ただ、同年の世界選手権100mでは準決勝でスタートのピストル音が聞こえないアクシデントに見舞われ(国際陸上競技連盟は正常に作動していたと回答)、大きく出遅れたことが響き、決勝には進めなかった。
隠していたヘルニアとの闘い
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そして2021年を迎える。最大の目標は東京五輪であったが、日本選手権100mで6位にとどまり代表を逃した。200mは欠場したが参加標準記録をクリアしている選手が少なかったことから代表入り。いざ出場した大会では、予選で自己記録の20秒08に遠く及ばない21秒41で敗退、初めての大舞台を終えた。
「ちょっとひどすぎますね」
「オリンピックというより、ふつうに自分が駄目だった感じです」
思うように走れなかったという趣旨を語ったが、実は語らなかったことがあった。前年からヘルニアに苦しんでいたことだった。
「去年はずっとヘルニアで、痛みと闘いながら、という感じでした」
そう今年6月の日本選手権で明かした。ようやく回復して思うように走ることができるようになったからだった。その日本選手権では100mに絞り3年ぶりに優勝していた。