濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
山本美憂のRIZIN再起戦、判定負けの真相とは? 勝者・大島沙緒里が「負けたと思った」MMAジャッジの難しさ
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2022/07/13 11:04
RIZIN沖縄大会、山本美憂と大島沙緒里の一戦は、ジャッジを悩ませる接戦となった
勝利した大島「負けたと思いました」
「正直、勝ったと思いました。自分に何が足りなかったのかと。試合全体を見ると勝った気がするんですけど」
インタビュースペースで、美憂はそうコメントしている。一方、大島は「負けたと思いました」と語った。
「最後のほうは失速して、守りに入ってしまった」
美憂のパウンドも、かなりダメージがあったそうだ。攻めていたように見える前半の闘いも、彼女自身の感触は違った。
「予想以上に守りも強くて、一本を取る練習をしてきたのにできませんでした」
「下から(関節を取る)技も用意してたんですけど、守りが固かった」
サブミッションで一本勝ちがしたかった大島は、それができなかったことで弱気になり、負けたと思ってしまった。逆に美憂はテイクダウンの攻防で上になり、パンチも当て、自分の持ち味が出せたと感じたのだろう。試合ぶりのどこを記憶しどう捉えるか。闘いを終えた直後でもあり、主観の問題としか言いようがない。本人の性格かもしれない。
そもそも関節技と打撃の優劣を見極めるのは…
ただジャッジの印象を掴んだのは、大島の闘いぶりだった。関節技は極まらなくてもアタック=ニアフィニッシュは大きな攻勢点となる。打撃の手数もあった。美憂の攻撃も“効いて”いたのだが、それがジャッジに伝わりきっていなかったのかもしれない。美憂が勝ったと思い、大島が負けたと思ったから判定が間違いだとは言えない。
そもそも僅差の展開で、関節技と打撃のどちらが有効だったかを見極めるというのは可能なのか。それを無理矢理にでもしなくてはならないのがMMAのジャッジだ。選手としては一本、KO、もしくは「誰がどう見ても勝ち」という内容でなければ、あとは運を天に任せるしかないような部分もある。この試合がまさにそうだった。
そういう試合だから、美憂の価値が下がったとも言えない。結果として次のチャンスが遠のいたということはあるにせよ、だ。大島は勝ったという事実を大事にすればいい。本人に悔いは残るのだろうが、決して恥ずかしい試合ではなかった。大島がこれまで闘ってきた階級は44kgのミクロ級と47.6kgのアトム級。RIZIN女子のスーパーアトム級は49kgだ。階級を上げての試合だから、フィジカルでの不利は否めない。それでも浅倉カンナ、山本美憂に勝利しているのだ。
RIZINは7月31日のさいたまスーパーアリーナ大会からスーパーアトム級世界トーナメントをスタートさせる。大島は日本代表枠に入ることができなかった。大島自身、RIZINに関しては個人的な目標、野望はさほどないという。