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山本美憂のRIZIN再起戦、判定負けの真相とは? 勝者・大島沙緒里が「負けたと思った」MMAジャッジの難しさ
posted2022/07/13 11:04
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
敗者は「勝った」と思った。勝者は「負けた」と感じた。そういう試合も、格闘技にはある。
昨年11月に続いて2度目の沖縄大会となった『RIZIN.36』。主役の1人は山本美憂だった。会場の沖縄アリーナはRIZINの“西の聖地”と位置付けられ、最新の設備を誇る。美憂は前回に続いて連続出場。加えて再起戦でもある。
前回はRENAとの対戦だった。女子レスリングのパイオニアだった美憂が40代でMMAデビュー、その初戦で敗れた相手だった。コーチであり弟の山本“KID”徳郁とリベンジを誓う。沖縄はKIDがジムを作り、自身も住んでいたことがある。
RENAとの再戦は、2018年に亡くなったKIDとの“約束”を果たすための試合だった。だが結果はヒザ蹴りを食らってのKO負け。そして今回の再起戦も、沖縄が舞台となった。この場所で勝つことが重要だった。
判定の瞬間、両者が見せた表情
対戦したのは大島沙緒里。DEEP女子ミクロ級、DEEP JEWELSアトム級と2階級制覇を達成した実力者だ。昨年10月には、RIZIN初参戦でスーパーアトム級戦線に。同級トップの一角である浅倉カンナに判定勝ちを収めている。
沖縄での試合、リードしたのは大島だった。組み付いてアームロック狙い。柔道出身のグラップラーである大島が得意とする展開だ。美憂がディフェンスし、グラウンドで上になっても十分な攻めを許さない。大島が下からヒジを放つ場面もあった。
大島の打撃も光った。サウスポーの美憂に右の蹴りをテンポよく放つ。一発の威力では美憂が上に見えたが、手数の印象は大島だった。
だが美憂も得意の左ストレートで逆襲に転じる。テイクダウンの攻防では上回り、終盤は上をキープして拳を落とす。
前半は大島、後半は美憂が優位。ジャッジの採点も割れた。2-1、勝者は大島。判定が告げられると、どちらも意外そうな表情を見せた。