球体とリズムBACK NUMBER
〈森保J、ブラジルに健闘も“予行演習”失敗〉ドイツとスペイン攻略法は「我々の形」1択ではない? 番狂わせの見本は“意外な欧州中堅国”
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2022/06/13 11:00
ブラジル相手に奮戦した日本代表。しかし「W杯で列強から勝ち点を取る」という観点ではまだまだ詰めていくべきことがありそうだ
翻って、ブラジル戦の日本が相手のボックス内に侵入した回数は数えるほどで、決定機と呼べるものは後半に伊東純也がフリーで放ったボレーくらい。低い位置から短いパスで組み立てても、ブラジルの強烈なプレスに引っかかってしまうことが多く、敵陣深くまで入っていくことに苦戦した印象だ。
「我々の形」をどこまで信じていくのか
「なかなかこじ開けさせてくれないのが現実です」と試合後の会見で森保監督は話した。
「ただ前半から非常に激しいプレッシャーを受けていたなか、やり続けることで後半に相手のブロックの中に入っていき、アタッキングサードにも入っていけた。選手たちが途中でやめていたら、防戦一方で終わっていたところですが、我慢して攻撃することで我々の形にも持っていけた。そこを継続していけば、シュートの形ももっとできると思います」
おそらく森保監督はここまで築いてきた「我々の形」を信じ、ブラジルにもそれをぶつけてみたのだろう。ただしアジアでは通用したやり方も、世界のトップクラスに通じるとは限らない。日本代表が抱える積年のジレンマのひとつだが、ブラジル戦を惜敗で終えた今、この議論が再燃してもおかしくはない。
ハンガリーは5枚の最終ラインで低く構え、中長距離のパスも多用し、昨年のEURO2020で準優勝したイングランドに、90分では23試合ぶりの土をつけた。
日本はセレソンを相手にも最後尾からパスを繋ぐスタイルを貫き、接戦に持ち込んだが、結果には繋がらなかった。
守備にも美学はある一方、信念と共に散るのもまた美学か──。最後は本当に望むものが何かによって、指針は決まっていくのだろう。
<#2、#3につづく>
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