球体とリズムBACK NUMBER
〈森保J、ブラジルに健闘も“予行演習”失敗〉ドイツとスペイン攻略法は「我々の形」1択ではない? 番狂わせの見本は“意外な欧州中堅国”
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2022/06/13 11:00
ブラジル相手に奮戦した日本代表。しかし「W杯で列強から勝ち点を取る」という観点ではまだまだ詰めていくべきことがありそうだ
FIFAランキング1位のブラジルに同23位の日本は0-1で敗れたが、同40位のハンガリーは同5位のイングランドに勝利(ハンガリーにとってイングランド戦の白星は60年ぶり)。スポンサーの名前を冠すようになったこの順位表がすべてを物語れるものではないとしても、格下が番狂わせを起こしたことに変わりはない。
そしてこちらは、れっきとした公式戦の勝ち点3だ。参考にできることはあるかもしれない。
5バック気味でボール保持には固執しなかったが
ネーションズリーグの初戦で、ハンガリーは少なくとも勝ち点1を取ろうとしたはずだ。そのために5バック気味の3-4-2-1、あるいは5-2-3とも取れるようなフォーメーションを低めに組み、ボールを保持することにはさほどこだわらなかった。そしておそらく、前半はスコアレスで折り返そうとした。
こうしたゲームプランは、格上から結果を得ようとする際に考えられるものだ。ハンガリーを率いるマルコ・ロッシ監督は、伝統的に守備を重んじるイタリア人でもある。先制されることを嫌い、慎重にゲームを進めたように見えた。
ただしマイボールにしたときは、ドミニク・シュボスライを中心に堂々とパスを回したり、アーダーム・シャライが大胆な超ロングシュートを狙ったりして、自分たちにリズムや勢いを出そうとしていた。
強い相手を前にしても萎縮しないメンタル──。それがあったから、ハンガリーは強者を前にしても、自らを表現できたのだろう。その点では、ブラジルと対戦した日本の選手も、引けを取らなかったと言える。遠藤航が中盤の低い位置でネイマールらの激しいプレスをさらりと受け流したり、原口元気が幅広く動いてシンプルなタッチでテンポを生み出そうとしていたように。
長いパスで一気に敵の急所を突くハイブリッドさも
日本対ブラジル戦と同様に、この試合も後半のPKが勝負を分けた。
右サイドからボックス左への大きなフィードに左WBナジ・ショルトが駆け込むと、応対したリース・ジェームスが手をかけて倒してしまい、宣告されたPKをシュボスライが決めている。当然ながら、PKを得るには敵のボックスに侵入することが大前提となる。
ビッグチャンスを創出するには、ショートパスを繋ぐ方が確率は高まるかもしれないが、長いパスで一気に敵の急所を突いて果実を掴めることもある。ハンガリーはそうしたハイブリッドな手法で、PK以外にも前後半に一度ずつビッグチャンスを迎えていた。