酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「驚異の69本塁打ペース」山川穂高30歳の進化は「高すぎた三振率」改善にあり《中村剛也超え・松井秀喜以来50発なるか》
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2022/05/17 11:03
戦線復帰後、絶好調の山川穂高。「どすこいポーズ」を今季は何度も見られるか
「三振はホームランのコスト」とはよく言われるが、三振数があまりにも多い打者は確実性に欠け、数字は上がらない。「三振かホームランか」の打者をMLBでは「フリースインガー」と表現するが、このタイプの打者は投手にクセを覚えられ、成績が伸び悩むことが多い。三振率が3割を超すのは赤信号だと言ってよいだろう。
しかし今年の山川は、ハイペースで本塁打が出ているにも関わらず、三振率は.200、選球眼が良くなり、確実性が上がっている。
ここ2年の故障、不振を経て――30歳となった山川はより確実性の高い打者へと進化したのではないか。
球場の大型化以降、46本塁打以上放った長距離砲は?
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NPBでは1988年の東京ドーム開設以降、本拠地球場の両翼が90mクラスから100mへと大型化したが、それ以降、日本人選手で50本塁打を打ったのは2002年の松井秀喜だけだ。
<1988年以降の日本人打者・シーズン本塁打数5位まで>
2002年 松井秀喜(巨人)50本塁打
2009年 中村剛也(西武)48本塁打
2011年 中村剛也(西武)48本塁打
2018年 山川穂高(西武)47本塁打
2001年 中村紀洋(近鉄)46本塁打
2005年 松中信彦(ソフトバンク)46本塁打
2008年 中村剛也(西武)46本塁打
2008年 村田修一(横浜)46本塁打
この間に、前述のとおり2013年にはバレンティン(ヤクルト)が60本塁打、2001年にはローズ(近鉄)、2002年はカブレラ(西武)がそれぞれ55本を打っている。外国人選手に比べて日本人選手はパワーで見劣りする印象があった。今季の山川にはこの記録を更新する期待もかかっている。
先輩・中村剛也も“統一球時代”に空前の48本塁打
2011年のNPBは統一球が導入され、パのリーグ打率は.270から.251に急落し、本塁打数も742本から454本に激減した。
20本塁打以上の打者は2010年の9人から2011年は2人にまで減った。そんな中で西武の中村剛也はソフトバンクの松田宣浩(25本)に23本もの大差をつける48本塁打を打った。これはロッテのチーム本塁打46本を上回った。
数字的には48本塁打だが、2011年の中村剛也は空前の大記録を作ったと言える。今年のNPBはその時期以来の「投高打低」となっている。そんな中で山川穂高もチームの先輩・中村と同様の大記録を樹立する可能性がある。