濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“落ちこぼれ”はWWEスーパースターに…KAIRIが明かしたスターダム帰還「まだやれる、やり残したことがある」《特別グラビア》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/03/25 11:04
自身のフォットネスジムを構えるなど、ゆかりのある江の島でリラックスした表情を見せたKAIRI
“学校みたい”に厳しく学んだアメリカでの経験
アメリカでの生活、特にNXT時代の1年半ほどは「プロレス漬け」だった。フロリダにあるWWEパフォーマンスセンターでの練習は「学校みたいにスケジュールがきっちり決まってました」とKAIRI。
「朝7時半から9時半までがリング練習。10時からお昼前までウェイトトレーニングで、午後は1時から3時まで英語の勉強が入ります。そして4時からはプロモクラス。テーマに沿って自分のことをアピールする練習ですね」
エンターテインメント色の強いWWEでは、マイクアピールの重要性も高い。バックステージの様子も“ストーリー”に大きく関わってくる。だから、その部分もしっかり練習するというわけだ。
「NXTでは集団行動。移動もみんなでバスに乗ってました。でも上(WWE本大会)だと全然違うんですよ。選手はアメリカのいろんな場所に住んでいて、会場も毎回違う。団体からは航空券が送られてくるんですけど、空港から会場へは自分でレンタカーを手配して、運転して、ホテルも自分で取って。夜中にタイヤがパンクしたり、トラブルはありすぎるくらいありました(苦笑)。ヨーロッパツアーでは12日間連続で試合しましたね」
WWEの生中継で鍛えられたアドリブ
WWEの中継番組は世界各地で放送されている。ネットの配信サイトもある。だから「届ける相手は世界中の人たち」だ。会場にいる観客だけでなく、カメラも意識しながら試合やマイクアピールをしていくことになる。「そういうこともパフォーマンスセンターで勉強するんですよ。実際、勉強してなかったらできなかったと思います」。
エンターテインメントだから決まった“役割”をきっちりこなすのが重要なのかというと、そうではなかった。逆に大変だったのは臨機応変さ。生中継だからアドリブ力も大事なのだ。
「一瞬も気が抜けなかったですね。入場前に急にマイクを渡されて“カイリ、1分つないで”とか。生中継だと時間調整しなきゃいけないんですよ。ある時は試合がないと聞いていて、ご飯も食べ終わったくらいのタイミングで“ごめん、今から試合お願い”とか。選手もギリギリまで対戦カードが分からないので、いつでもどんな相手でも対応できなきゃいけないんです」
「次いつチャンスがくるか分からない。みんな必死でしたね」
そういう状況で、選手たちは一丸となってショーを盛り上げる。同時に生存競争も激しい。KAIRIが入団した時、WWEでは“女子革命”が起きていた。かつての女子部門は大会に“花を添える”といったイメージで、選手も女子マネジャー役も一括りに“ディーバ”と呼ばれていたのだが、男子と同じく“スーパースター”の呼称が使われるようになった。女子のみのビッグマッチも開催。年間最大のイベント、レッスルマニアのメインが女子の試合になったこともある。
「女子選手のやる気は凄かったですよ。“私たちがメインを取るんだ”とか“ベストバウトをやってやる”という熱を感じました。女子だけ前日に会場入りして練習したり。でも女子の試合は1興行に1つか2つ。まずその枠に入らないといけないんです。ヘタな試合をしたら、次いつチャンスがくるか分からない。みんな必死でしたね」