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“落ちこぼれ”はWWEスーパースターに…KAIRIが明かしたスターダム帰還「まだやれる、やり残したことがある」《特別グラビア》
posted2022/03/25 11:04
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Takuya Sugiyama
3月26日、27日のスターダム両国国技館2連戦に、KAIRI(カイリ)が参戦する。彼女は“落ちこぼれ”であり“アメリカ帰りの大物”だ。“生え抜き”であると同時に“出戻り”でもある。
2012年、スターダムでデビューし宝城カイリのリングネームで活躍。2017年6月に世界最大の団体WWEと契約すると、新たな名前「カイリ・セイン」で世界的な人気選手となった。
女子トーナメント「メイ・ヤング・クラシック」で優勝。下部団体NXTで女子シングル王座となり、トップブランドのスマックダウンに昇格するとASUKAとのチーム「カブキ・ウォリアーズ」でWWE女子タッグ王者となった。『ロイヤルランブル』、『レッスルマニア』といった大舞台にも出場している。
2020年夏、アメリカから帰国。WWE JAPANのプロモーション・サポーターとして活動してきた。同年2月に日本人男性と結婚したこともあり、自分を見つめ直す時期にきていると感じたそうだ。
「まだやりたい、やり残したことがある」
「長期欠場もなくずっと突っ走ってきましたから。特にWWEでの3年間は、何十年にも感じるくらい濃かったです。本当にたくさんのことを経験させてもらって。もうアメリカではやり切れたかな、思い残すことはないなと。コロナ禍で試合が減った中でこれからどうするか、いろいろ悩みはしたんですけど」
セカンドキャリアを考え、スポーツメンタルトレーナーの資格を取得。ボディメイクインストラクターや宅地建物取引士の勉強もしていた。今年1月には法政大学ヨット部時代にも住んでいた湘南にフィットネスジム『PARA-FIT24』をオープンした。昨年いっぱいでWWEとの契約を終えると、スターダム参戦へ。それは「約束」を守るためだった。
「スターダムを去る時に“必ず帰ってきます”と言いましたから。アメリカには学びに行くという感覚でした。リング復帰はずっと頭にありましたね」
最初は、両国大会だけの“ゲスト参戦”のつもりだった。だが出場発表会見では継続出場を表明、ベルトも狙いたいとコメントしてファンを驚かせている。
「帰国してから選手を応援したり相談に乗ったりという立場だったんですけど。ジムでトレーニングして、プロレスや格闘技の映像を見ていると闘志がどんどん出てきました。“この感じ、しばらくなかったな”と。まだいけるし、まだやりたい、やり残したことがあるんじゃないかって。試合をしていない期間があるから、そう思えたんでしょうね。特にRIZINとかUFCとか、女子の格闘技は見てると燃えますね。“私ももっと強くなりたい!”って」
スターダム参戦は「アメリカでやってきたことの答え合わせ」
KAIRIはスターダム所属時代、ワールド・オブ・スターダム、ワンダー・オブ・スターダム、タッグ、6人タッグのベルトを巻いている。それでも今またベルトを視野に入れるのは、WWEを経た自分の力を日本で、古巣のスターダムで試したいからだ。
「前にスターダムでチャンピオンになった時は、必死すぎましたね。今はWWEで学んだことも合わせて、もっとできるんじゃないかという気持ちです。もっと盛り上げたいし、今なら肩の力を抜いて試合ができる。アメリカで感じたのは、お客さんに楽しんでもらうためには自分が心から楽しむのが一番大事だということ。スターダムのリングで、アメリカでやってきたことの答え合わせがしたいんですよ。今の自分が日本で試合したらどうなるのか、どんな化学変化が起きるのかっていう興味もあります」