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サイコロで勝敗が決まる? 人気団体が “脱プロレス”で見せる女優たちのチャレンジとは…エース青野未来「エンタメだけど闘いがある」
posted2022/03/15 17:03
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
プロレスにしか見えないが、プロレスではない。新しいチャレンジに“女優”たちが取り組んでいる。
2015年にスタートした団体アクトレスガールズは、その名の通り“女優によるプロレス”を標榜し、芸能界からスカウトした選手を数多くデビューさせた。
プロレスファンからも業界内からも偏見はあった。対戦相手に「アイドルくずれ」と罵倒された選手もいる。だからこそ、彼女たちは必死にプロレスに取り組んだ。この団体からデビューした中野たむ、なつぽい、ひめかはスターダムに移籍してチャンピオンベルトを巻いている。
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ただ、アクトレスガールズは昨年いっぱいでプロレス団体としての活動をやめた。そのことで、プロレスをやりたい選手たちは“卒業”していった。それも1人や2人ではない。事実上の団体分裂だ。
“勝敗が決まっている”アクトレスリング
そうまでして運営サイドがやりたかったのは、プロレスの技術、試合形式、大会フォーマットを使ったエンターテインメント・パフォーマンスだ。大会ではなく公演。出場ではなく出演。ファン参加型であることも打ち出した(公演中、次回公演の対戦カードを抽選で選ばれたファンが決めていく)。プロレスという枠を外すことで、自由な発想で面白いことができるのではないかと考えたのだ。公演名は「アクトレスリング」。
新生アクトレスガールズは、試合の勝敗があらかじめ決められたものだと公表している。勝ち負けを決める要素は複数。
「実力(技術、演技力、パフォーマンス)」
「努力(練習時間など)」
「人気(集客力、物販の売上など)」
「運(サイコロを振って決定)」
「キャリア(上記得点で同点の場合のみ)」
これらのトータルの点数が上の選手が勝者となり、その結果に従ってリング上で試合形式のパフォーマンスが展開される。2月13日、新宿FACEでの公演は準備段階ということで、各試合のポイントは公開されず。
それもあって、観客の目の前で繰り広げられている光景そのものは従来のプロレスと何ら変わりがなかった。3カウント、ギブアップで試合が終わり、さばくのもプロレスでおなじみのレフェリーだ。事前の説明を知らなければ、プロレスにしか見えない。「選手」、「試合」という言葉も使う。でも実際にはプロレスではないと主催者が公言している。何と言えばいいのか「あらかじめ勝敗が決まっていると観客に伝えた上で見てもらうことが前提の闘い」である。
それが面白いのかどうかと聞かれたら、まだ分からないとしか答えられない。アクトレスガールズは、あえてプロレスから離れた。とはいえアクトレスガールズ“ならでは”の楽しさはまだ見えてこない。独自性のアピール、情報発信も含めまだまだこれからだ。