濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
サイコロで勝敗が決まる? 人気団体が “脱プロレス”で見せる女優たちのチャレンジとは…エース青野未来「エンタメだけど闘いがある」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/03/15 17:03
新生アクトレスガールズでは中心選手として活躍する青野未来(右)
必死になってカウント2で返すのは何のためか
これから大事になってくるのは、その「勝ちたい」という気持ちや負けた時の悔しさをどう表現し、伝えるかだろう。何しろリングに上がった時点で勝敗は決していて、そのことを(どちらが勝つかは分からないにせよ)観客も承知している状況なのだ。必死になってカウント2で返すのは、では何のためなのか。試合後のコメントは何をどう語ればいいのか。
サイコロで「運」ポイントを出し、勝敗が決まる模様は大会後に試合のダイジェスト映像とともにYouTubeで公開される。では、それを見なければ「観戦」は完結しないのかどうなのか。新しいことをやる以上、新しい見せ方伝え方、新しい言葉も必要になる。
たとえば、新木場公演のメインでは松井珠紗が福田にジャーマン・スープレックスを決めたが形が崩れ、3カウントを奪えなかった。明らかにフィニッシュを狙っていたように見えたのだが。松井は再度ジャーマンで投げ、最後はフィッシャーマンズ・スープレックス。本当は一発目で決めたかった、もっと磨いていきたいと試合後の松井は語っている。
敗れた福田は泣いていた。もしかすると、一発目のジャーマンを“受けきれなかった”悔しさもあったかもしれない。アクトレスリングではそういう見方、語り方もできる。
プロレスが嫌になったから…ではない
何がどう面白いのか、どこをどう見るといいのか。伝えるための態勢は整っているのか。そして、ショービジネスとして可能性はあるのか。すべてはこれからだ。魅力的な演者がいることだけでなく、今は“未知”であること自体に価値があるのかもしれない。
付け加えると、青野は今もプロレスラーだ。アクトレスガールズがプロレス団体としての活動をやめることで、専門誌が青野についてプロレス引退と報じたが、それは事実ではないと彼女は反論している。
団体の方針もあるから今すぐ他団体に出るというわけではないが、少なくともプロレスラーとしての看板は降ろしていない。プロレスラーであり役者である青野未来が「アクトレスリング」をやっている。そう書くとより複雑になる気もするが、ともあれプロレスが嫌になったから今これをやっているということではないのだ。そのことを、プロレスファンには知っておいてもらいたいと思う。
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