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吉田知那美が語った“笑顔を絶やさない理由”「楽しむには覚悟がいる」…なぜ北京五輪でカーリング女子日本代表は輝いたのか?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byNaoya Sanuki/JMPA
posted2022/02/21 11:04
日本勢最高位となる2位、銀メダルを獲得したカーリング女子日本代表(ロコソラーレ)
不安やプレッシャーを全員で共有し受け止めれば、軽減される。共有すれば、お互いの状態が分かりプレーにも生かされる。その意識の土台には、常にお互いを肯定する精神が根付いている。だからこそ、試合中どんな状況であろうと、ポジティブであることを貫く。それがチームの特色となり、最大の強みとなっている。
例えば折々の試合で、スキップの藤澤五月も同趣旨の話をしていた。チームメイトの言葉に勇気づけられたことや、投げやすい空気を作ってくれたことへの感謝の言葉だった。
海外選手も称賛「一緒に戦っていてすごく楽しい」
そんなカーリング女子日本代表の姿勢は、北京五輪に参加していた対戦国のチームからも賞賛を得た。例えば、銅メダルを獲得したスウェーデンの選手からは「あなたたちは素晴らしい。だから大丈夫」という言葉をかけられている。優勝したイギリスのスキップ、イブ・ミュアヘッドは「(日本は)一緒に戦っていてすごく楽しいですし、表情も笑顔。カーリングというスポーツにとって素晴らしいことです」と語っている。どちらの言葉にも、日本代表への率直な賛辞がある。
成績以上に、チームのあり方で存在感を見せたことは、特筆されるべきところだ。
そして、チームのあり方が賞賛された背景には、日本代表が「他チームへの敬意を忘れなかった」ことも欠かせない。しばしば選手たちは、ストレートに海外チームへの尊敬、憧れの選手について語り、会えば態度で示してきた。試合後、結果がどうあれ相手を称える姿勢は貫かれた。決勝で敗れたあと、イギリスの選手を笑顔で称えたのも、その姿勢を象徴するワンシーンだ。
日本代表から見えた“カーリングの文化と伝統”
逆の立場から見れば、日本代表に限らず、日本を称賛する他チームの選手にも、ライバルへの敬意がうかがえる。日本代表に敗れたチームもまた、悔しさがあったとしても日本の勝利をおとしめるような態度は皆無だったし、握手を求め、会場から去っていく通路で会えば、次へ向けて激励する姿があった。