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15歳ワリエワ騒動を“ただのドーピング事件”にしてはいけない理由…選手たちが語った“ロシアフィギュア界の闇”「みんなやってるよ」
posted2022/02/15 17:50
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
JIJI PRESS
多くの人がもやもやした気持ちを抱えたまま、フィギュアスケート女子を観戦することになった。
ROC(ロシア五輪委員会)の北京五輪フィギュアスケート代表、カミラ・ワリエワの検体から禁止薬物が検出されたというニュースが発表されたことで、彼女の個人戦出場は一時不透明な状態になった。そして出場できるか否かはCAS(スポーツ仲裁裁判所)の手に委ねられた。
そして、2月14日午後。ワリエワに「出場許可」というニュースが届けられた。なお、3位以内に同選手が入賞した場合は、表彰式やメダル授与式を実施しないという。
今回の経過、裁定に関してはすでにニュース速報などでカバーされているはずなので、ここでは、今回の一連の騒動、そしてロシアの抱える問題に焦点を当てたい。
ワリエワ本人に“ドーピングの意思”はあったのか?
15歳が禁止薬物を自ら購入し、摂取したのか。
ドーピングのニュースが出た際、多くの人が違和感を感じたのではないだろうか。
検出された薬物「トリメタジジン」は狭心症や心筋梗塞などのための薬で、血流を良くしたり心肺機能を高める効果があると言われている。
スポーツに関して言えば、回復力を上げる効果があるとも言われている。長時間の練習が必要とされるスケートにおいて、この薬物を服用することで、彼女が他の選手よりもフレッシュな状態で練習に臨めていた可能性は拭い切れない。
ちなみに2014年に水泳の孫楊(ロンドン五輪金メダル)が3カ月、2019年にはロシアの漕艇選手セルゲイ・フェドロフツェフ(アテネ五輪金メダル)が4年間の出場停止処分を受けるなど、トップ選手の使用実績もある。過去に陸上を含むロシアの選手がこの薬物で処分を受けていることもあり、ロシアではある程度認知されている薬物だ。
スポーツ界には「うっかりドーピング」という言葉があるが、ワリエワが心臓に痛みを感じたり、何らかの症状を感じたとしても「うっかり」飲んだとは考えにくい。
ワリエワのコーチ、エテリ・トゥトベリーゼ氏のチームは選手の体重や練習などを徹底管理することで知られている。このチームを追いかけたドキュメンタリーでは、選手たちの体重が100グラム単位で管理されていることを仄めかしている。