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15歳ワリエワ騒動を“ただのドーピング事件”にしてはいけない理由…選手たちが語った“ロシアフィギュア界の闇”「みんなやってるよ」
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byJIJI PRESS
posted2022/02/15 17:50
北京五輪女子フィギュアスケートの金メダル候補、ロシアのカミラ・ワリエワのドーピング違反騒動。14日、スポーツ仲裁裁判所は「個人戦出場」を認める決定を下した
「過去に在籍した選手は皆、コーチに虐待されたと言っている。ジェーニャ(メドベージェワの愛称)やユリアは摂食障害になったし、ジェーニャは疲労骨折にもなった」
平昌五輪銀メダルだったエフゲニア・メドベージェワも同様だ。
メドベージェワ本人も、2021年にインスタライブでファンからの「食事制限はありますか」という質問に対し、「身長は158cmで、体重は33キロから59キロをウロウロしています。病気になってからは、決まった時間にちゃんと食事を摂るようにしています」と答えており、摂食障害という言葉は出していないものの、なんらかの問題を抱えていることが窺える。
そのほかにも骨折や怪我で、若くして引退を余儀なくされた選手が多くいる。
ワリエワのドーピング問題は“氷山の一角”
今回のワリエワのドーピング問題はもちろんだが、ほかにもロシアのフィギュアスケートには多くの問題があると感じられる。国際大会からドーピングの影響で制裁を受けているにもかかわらず、過去にドーピングに関わっていた医師を帯同すること自体、理解に苦しむ。
また同じチームから摂食障害の選手が多数出ている現状も見過ごせない。
少し異なるケースだが、米国の陸上長距離チーム、ナイキ・オレゴンプロジェクトで指導していたアルベルト・サラザール氏は、ドーピングに関与していた疑いで米国反ドーピング機関から4年間の資格停止、また性的および精神的な違法行為(女子選手の体重や見た目を侮辱する発言や行動など)で米国セーフスポーツセンターから、米国において永久に指導ができないという厳しい処分を受けている。
今回の件で言うと、ワリエワは被害者だろう(しかし陽性が出ているので出場は許可されるべきではないのだが)。そしてこれは、氷山の一角だと感じる。
ロシアの女子選手たちは、SNSやメディアを使って我々にサインを送っている。その声を無視し続けていいのだろうか。
ロシア五輪委員会や反ドーピング機関に自浄作用がないのであれば、国際的な団体が介入し、彼女たちが安全な状況で競技ができる環境が整備されることを願ってやまない。
〈参考〉
※1 https://www.sportcal.com/News/PressReleases/32633
※2 https://www.sport-express.ru/figure-skating/reviews/974642/
※3 https://www.rferl.org/a/russian-teen-figure-skater-regrets-claims-of-widespread-doping/29724762.html
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。