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15歳ワリエワ騒動を“ただのドーピング事件”にしてはいけない理由…選手たちが語った“ロシアフィギュア界の闇”「みんなやってるよ」 

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及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

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photograph byJIJI PRESS

posted2022/02/15 17:50

15歳ワリエワ騒動を“ただのドーピング事件”にしてはいけない理由…選手たちが語った“ロシアフィギュア界の闇”「みんなやってるよ」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

北京五輪女子フィギュアスケートの金メダル候補、ロシアのカミラ・ワリエワのドーピング違反騒動。14日、スポーツ仲裁裁判所は「個人戦出場」を認める決定を下した

 ということは、選手が服用している薬を知らないとは考えにくい。

 もしワリエワがコーチや関係者に体調不良などについて相談していたなら、しかるべき機関で検査をし、治療もしくは休養をさせるべきだ。もし彼らが確信的にワリエワにこの薬を飲ませたならば、それは「虐待」と言われても仕方がない状況ではないだろうか。

“いわくつきの医師”がROCフィギュア代表に同行

 2018年以降の五輪で、ロシアが『ロシア』ではなく『OAR(ロシアからの五輪選手)』『ROC(ロシア五輪委員会)』という名称で出場しているのには理由がある。組織的なドーピング問題で2022年12月まで国際大会から除外されており、その制裁の一環だからだ。ただしクリーンと認められた選手は個人資格で五輪に出場が認められている。

 そういった制裁があるにもかかわらず、ロシア人選手のドーピングの違反数減少は見られない。陸上に関して言うと、2016年以降にも60人以上の違反が発覚し、処分を受けている。ドーピングに関して監視が(一応)敷かれ、反ドーピングが強化されている(はず)にもかかわらず、他国と比べてその数は依然として多く、ドーピングに対しての姿勢が改善しているとは言えない。

 今大会のROCの姿勢も理解できない点がある。

 ROCのフィギュアスケート代表にはいわくつきの医師、フィリップ・シュベツキー氏が同行している。

 同医師は2008年夏季北京五輪の際、ロシアボート連盟の医師も務めていたが、大会前に選手たちに不正輸血を行っている。結果的に6選手が資格停止処分、またロシア代表は国際ボート連盟主催の試合に1年間の出場停止処分が下された。遠征先のスイスのホテルのゴミ箱から、血液が付着した注射針などが見つかり違反が発覚したというのだから、杜撰というか、もう言葉がない。(※1)

 ちなみに同医師は2007年から2010年までアンチ・ドーピング規則違反への違反によりロシアボート連盟から資格停止処分を受けていたが、現在はROCフィギュアスケート代表の医師になっている。他の国ならばスポーツから永久に締め出される案件だが、ロシアはそうではないらしい。

 2016年3月にアイスダンスのエカテリーナ・ボブロワの検体からメルドニウムが検出された際にも、シュベツキー医師が関与していたと言われている。

 ボブロワはロシアのスポーツ紙に対して、通常は大会の1週間半前くらいから医師に勧められた『アクトベジン』を摂取するが、シュベツキー医師がそれと(メルドニウムを)間違ったのではないか、と答えている。(※アクトベジンは持久力を高めたり、筋肉の回復を早める効果があると言われている)(※2)。

 シュベツキー医師への(ロシア以外の)世間の目は厳しいにも関わらず、自身のSNSでワリエワとの写真を掲載し、親しい関係性をアピールしているように、優秀なスポーツドクターを演じている。彼もまた今回の出来事のキーマンであることは疑いようがない。

過去にドーピングをほのめかした選手も

 過去にロシアのフィギュアスケート界にドーピングが蔓延していることをほのめかした選手もいる。(※3)

 今大会、ウクライナ代表として出場するアナスタシア・シャボトワは、2019年1月に自身のインスタライブでのファンとのやり取りのなかでこんな発言をしている。

【次ページ】 「演技の秘訣は?」「いっぱいドーピングをすること」

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