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八村塁の“休養”に考える代表選手のケアと育成年代への警鐘「バスケ以外のことをやったほうがいい」の真意とは? 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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posted2022/02/01 11:01

八村塁の“休養”に考える代表選手のケアと育成年代への警鐘「バスケ以外のことをやったほうがいい」の真意とは?<Number Web> photograph by Getty Images

長期離脱を経て復帰を果たした八村塁。報道陣の前で「戻ってこられてうれしい」と笑顔をのぞかせた

 佐藤が感じた『もやもや』の原因は、育成の現場でやらないほうがいいと説いていることを、自分たちが強化の現場で選手たちに求めているのではないか、というところからくる。

 もちろん、一般的に育成世代の選手たちはアマチュアで、代表強化の対象になる選手たちはプロなので、同じ考え方が当てはまるというわけではない。しかし、育成の現場では指導者養成講座などで子供たちにノンストップにバスケットボールさせることの弊害を説いている一方で、強化の現場ではオフシーズンに代表が招集される。国内で活動する男子選手の場合は、2017年からのワールドカップ予選の大会方式の変更により、シーズン中にも代表活動を行わなくてはいけない状況が続いている。

 今回、八村はチームから許可を得て休養を取るという選択をすることができたが、同じように身体的、あるいはメンタル的な疲労を抱えた選手を作り出さないために、自分たちは何をすればいいのだろうか。そんな気持ちから出た問いかけだった。

「他に何のスポーツをやっていた?」

 育成年代の選手たちの練習しすぎによる疲労やメンタル的なバーンアウトについては、協会でも以前から警鐘を鳴らし、佐藤も指導者講習会などの場で度々、参加者にアドバイスをしてきた。

 八村が語っていたように、日本ではジュニア年代のスポーツの多くは、1年のうち限られた時期だけ活動するシーズン制ではなく、年間通して同じスポーツを行うのが当たり前になっている。そのため、複数のスポーツを掛け持ちする子供は少ない。さらに、大会での勝利など、短期的な目標を達成することに囚われた活動をすることが多い。

 その枠組み自体を変えることは簡単なことではないが、指導者に情報を与え、選手の長期的な育成を考えることで、現場から少しずつ変化を起こしてもらいたいと考えての提言だ。

「たとえばNBAの選手を対象にした論文があって、高校の時に複数のスポーツをやっていた選手とそうでない選手を比べると、複数のスポーツをしていた選手のほうが大怪我は少ないし、選手生命も長いんです」と佐藤。

「一般的には、15~16歳ぐらいまではいろんなスポーツを体験したほうがいいと言われています。これは、カナダのLTAD(Long Term Athlete Development=長期アスリート育成)の考え方だったり、オーストラリアなどいろんな国でやっていることです。

 アメリカでも、アメフトの名門大学の監督が、選手をリクルートするときにアメフト以外に他のスポーツを何かやっていたのか聞くそうです。同じように能力がある選手で、マルチスポーツの選手とそうじゃない選手のどちらかを選ぶなら、マルチスポーツの選手を優先する。マルチスポーツをやっている選手は、運動能力もそうだし、思考力も高いというのは、アメリカのコーチの間ではよく知られていることだと思います」

【次ページ】 アメリカでも「早期特化」が問題に?

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