平均プレー時間「4分39秒」、それでも田臥勇太41歳が“戦い続ける理由”「コートにいてもベンチにいたとしても…」

　4分39秒。

　今シーズンの前半戦終了時点で18試合に出場した、宇都宮ブレックスの田臥勇太がコートに立っていた平均時間である。

　10分×4クォーターのバスケットボールにおいて、田臥のプレー時間は短い。しかし彼にとってそのスタッツは、単なる事実に過ぎないのかもしれない。

「それが、自分が40を過ぎてやっている意味」

　田臥の戦いは、まだアリーナが光に包まれる前から始まっている。

　全体練習開始の前から入念なストレッチで体を温める。代謝を高めるためヨガをメニューに取り入れるようにもなった。前回の試合、前日の練習での筋肉の張り具合、負担を感じた部位はどこか？　トレーナーの意見を聞き、自分の体と対話を繰り返しながら、その日のパフォーマンスをイメージする。

　ゲーム開始を告げるホイッスルが鳴る。主将である田臥は、スタメンでなくともベンチから流れを観察する。プレーする選手の練習での取り組みや心情を汲み取る。攻勢に転じれば声を張り、流れが相手に傾きかければ手を叩き鼓舞する。チームの呼吸を常に感じつつ、「今日のゲームで自分が出れば、どういうプレーをしようか」と、目まぐるしくシミュレーションを変化させていく。

　仮にその日の出場時間が1分だったとしても、40分間、戦い続ける。それが、ゲームにおける田臥のメンタリティだ。

「そんなに甘い世界ではないんで。与えられた時間のなかでどれだけ表現できるか、状況に応じて自分が必要な場面って必ずあって。40分間のなかで、プレーがゲームにどんな影響を与えたか、チームにいい波を作れたかとか、全体的なことを常に感じるように意識しています、コートにいてもベンチにいたとしても。それが、自分が40を過ぎてやっている意味だと思っています」

田臥が見たスティーブ・ナッシュの“現役晩年”

　コートに立ち続ける意味。

　田臥にとってそれは、挑戦に他ならない。「今もチームが必要としてくれてありがたい」と感謝しながら、バスケットボールを始めた時から首尾一貫して壁に立ち向かう姿勢が、選手としての支えとなっている。

1998年、インターハイ決勝時の田臥。能代工の司令塔として3年連続3冠を達成した ©AFLO

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　能代工（現・能代科学技術）の司令塔として、3年連続でインターハイ、国体、ウインターカップを制する「9冠」の原動力となり、2004年に日本人で初めて世界最高峰のNBAの舞台まで到達した。日本バスケットボール界で偉業を成してきた青年は、早いもので41歳となった。

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