令和の野球探訪BACK NUMBER
「一つひとつのプレーに理由と根拠が」 “県ベスト8常連の壁”をブチ破りたい千葉明徳ナインに響いたイチローの言葉
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2021/12/30 17:07
甲子園を目指して成長を誓う千葉明徳ナイン。(前列左から)川島、作田、森岡(後列左から)秋田、青柳
強いまとまりや高い集中力を作るためには、元気さも必要ではある。だが「その先に行くため」のヒントを得たのだ。
当然リスクはあるが、選手たちが口を揃えるのは「8強」やその壁を超えることではなく、「甲子園に出場したい」という言葉だ。大きな見返りのために、どこかで何かに賭けるのも悪くないだろう。
まずは、練習の中でもしっかりオフの時間を作るようにした。それまでも休憩は練習ごとの合間にあったが、声を出して足を止めないようにしていた。しかし、それを見直して“考える時間”を与えた。
ADVERTISEMENT
自滅による初戦コールド負けに終わった今秋の反省も生かして、選手たちが主体性を持つことを今は再三説いている。
そして、そのためのアプローチについて「イチローさんの考えやヒントから、きっかけをいただきました」と岡野監督は振り返り、「選手たちが今、それにどれだけ気づいていけるかどうかだと思います」と選手たちの変化に期待をかける。
オフとオンの切り替え、客観的な目
主将の作田凌太朗が「一つひとつのプレーに理由と根拠がありました」と、選手たちもイチローさんの指導には大いに刺激を受けている。まだエースナンバーを付けたことがない右腕の青柳克哉は遠投での意識や球種について指導を受けた。
「指にかかっているイメージで常に投げた方がいいと。受け手の右側(右利きの投げ手から見て左)に引っ掛けるイメージでもいいと指導していただきました。また、変化幅の小さな変化球も覚えた方がいいと言っていただいたので、カットボールやツーシームの習得も目指しています」
選手たちだけではない。女子マネージャーも気遣いに対して気遣いで返す、心温まる場面があった。
ドリンクメニューを書いた表を作った。ただ単に飲み物の種類を書くだけではなく、それぞれの効能や特徴を添えた。そして、一番下には「ビール。頑張ったあとにはコレ! 穏やかな苦味と華やかな香りが特徴」とユーモアも。それをイチローさんは大いに喜んでくれるばかりか持ち帰ってくれた。そうしたオフの姿に加え、練習中に見せるオンの鋭さにも触れた。選手でなくとも、今後の役割や人生に大いに役立ちそうだ。