令和の野球探訪BACK NUMBER
「一つひとつのプレーに理由と根拠が」 “県ベスト8常連の壁”をブチ破りたい千葉明徳ナインに響いたイチローの言葉
posted2021/12/30 17:07
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
Yu Takagi
MLB・マリナーズの会長付き特別補佐兼インストラクターであるイチローさんが指導に訪れた千葉明徳高校。
千葉駅から京成線で約10分の学園前駅の目の前に広大なキャンパスを持ち、専用の野球グラウンドを持つ。NPBにも高校時代から県内で名を馳せ、国際武道大と日立製作所を経てプロ入りしたK-鈴木(鈴木康平/オリックス)を送り出している。
田中将大らと同世代の1988年生まれ・岡野賢太郎監督が指揮を執って以降、ここ6年で8回、県大会で準々決勝進出を果たした新鋭の高校だ。一方で準々決勝での戦績は、コーチから監督に昇格してすぐの2015年秋を除き全敗と、「8強の壁」が大きく立ちはだかっている。今夏は甲子園に出場した専大松戸に対して延長11回まで粘ったものの、1対2で力尽きた。
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甲子園出場経験校のように、一線級の選手が来ているわけではない。県立校に落ちて併願として入ってきた選手もおり、世代によって力には差が出て来る。
だから「どんな代でも8強までは確実に進んでいる」とも言え、それだけの“育成力”は兼ね備えている。
壁を打ち破るために取り入れた方がいいこともあるだろうが、一方でそれをしたことで準々決勝にさえ進めなくなるのでは……。そんな模索を続けていたところにやってきたのが日米球界のレジェンドだった。
「すべて見抜かれていました」
「すべて見抜かれていました」と岡野監督は振り返る。
「ベスト8から上に行けない中で、考えていた次のステップに対して、“やった方がいい”と分かっていても、やることでのリスクもある。なので、なかなか判断はつけられずにいました。でも、その状況に対して“こうだよね”とズバッとご指摘いただきました。その上でどうしたらいいか、何をしたらいいかを考えていただきました」
練習試合や普段の練習の様子を見たイチローさんからハッキリと言われたのは「落ち着きが無い」ということだ。「元気はある。でもそれがプレーをしにくくしている場面がある」といった旨だ。
確かに私も5~6年にわたって千葉明徳のグラウンドへと取材に伺っているが、常に元気で良い雰囲気で練習をしている。指導陣も33歳の岡野監督をはじめ若く、活気溢れる練習が大きな魅力だ。
一方で、試合ではそれがマイナスにもなると、イチローさんは指摘したのだ。例えば常に「走るぞ!」と見せかけていても、メリハリが無ければ「どうせポーズだけ」と相手に見抜かれてしまう。また、木更津総合、習志野、専大松戸といったチームには経験豊富な監督と選手たちがいて、どんな場面でも落ち着きが保たれていて通用しない。